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最近つくられたその施設は、甘い香りで満たされていた。 「ようこそ、おいでくださりました」 年配の男が一人、立ち上がって少女を迎え入れる。 その出迎えに、少女は恐縮気味にぺこりと頭を下げた。 「すいません、ご多忙の折に無理をいってしましまして」 「いえいえ、構いませんよ」 営業用の笑顔が男の唇に浮かぶ。 「では早速ですが、先日のお約束どおり、今日はうちの施設についてご案内いたしますね」 「お願いします」 簡潔な了承を得て、男は施設の奥へと少女を伴って歩き出した。 ついていこうとする少女。 ふと、真鍮のプレートが視界に入る。 『ゆっくり加工所』 そこが、少女の目的の場所だった。 「ここが、捕獲した『ゆっくり』の貯蔵庫です」 男が背の高い柵を指差していた。 柵の隙間には、押し付けられて膨らんだ顔が並ぶ。 「ゆゆゆ……」 少女が上から覗くと、中にひしめき合う「ゆっくり霊夢」と「ゆっくり魔理沙」の一群。三十匹はいるだろうか。 これは、最近幻想郷で見かけるようになった奇矯な生き物たち。 発生源や種のあらましもまったく不明だが、よく似た顔の実在人物とは関係がないことと、中身が餡子などでできていることだけは知られていた。 幻想郷の甘いものが好きな庶民にとっては、甘味を手の届きやすい値段に押し下げた恩人たちといっていい。 そのゆっくりたちは押し込められ、柔らかい体をひしゃげながら、視線の定まらない瞳で虚空を眺めていた。 「ゆっくり?」 が、その瞳に少女の姿が映し出されるなり、一斉に騒ぎ出す。 「おねーさん、ここからだして! おなかすいたよ! おうちかえる!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、柵をぎしぎしと揺らすゆっくりたち。 「ここにいるのは、全て捕獲したものですか?」 「ええ、お客さんの中には天然ものがいいという方もいるので」 少女と男の会話に、ゆっくりの必死の言葉を意に介した様子はない。 「私なんぞは味にうといものですから、繁殖したものと天然ものの違いなんてわからないのですがね」 ハハハと乾いた笑い声を上げる男。 少女も、お愛想の微笑で応じる。 男は冗談が通じたことに一応の満足。 「では、次はその繁殖場面へご案内します」 「はい」 二人、ゆっくりに背を向ける。 「ゆ! ゆっくりしていってよー!!!」 柵をびりびりと震わす声も、扉を閉めるとかすれて消えていった。 「繁殖の成功と効率化は、この事業が成り立つための最大の課題でした」 しみじみと男は呟く。 男と少女の二人が並んで立つのは、背の低い柵の前。 その中には、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が一匹づつ紐で結ばれて転がっている。 「最初に繁殖に成功したのは、この組み合わせです。ですが、問題がありまして」 言うなり、男は無造作に柵に手をつっこむ。 「ゆっ!?」 そのまま、二匹をわしづかみにするなり、手首をぶるぶると小刻みに振るわせ始める。 「ゆー!!! ゆー!!!」 揺すられるがまま、甲高い声を上げ始める二匹。 「ゆー、ゆー、ゆーっ!」 やがて、声がとろんと艶をはらんでいく。 男の手首がさらに激しく蠢動を重ねると、ゆっくりの口がだらしなく開かれ、赤みが濃い色彩を帯び始めた。 「ゆゆゆゆゆゆゆ」 目つきが熱を帯びたところで、男は手を止めた。 「ゆ? ……ゆっくりしていってー!!!」 切なげな声が男の手を追いかけるが、すでに男は少女と向き合っていた。 「こうやって発情させた後、二匹だけにして暗がりに放置しないと繁殖を始めないので、手間がかかる上、数を増やせないという欠点がありました」 「なるほど」 「ですが、ここで繁殖力旺盛なゆっくりアリスという新種を発見したのが事業の転機となりました。今日、ちょうどその繁殖予定日となっています」 男が部屋の奥に視線を投げると、その視線を受けた従業員らしき男が両手にゆっくりを二匹抱えて近づいてくる。 ゆっくり魔理沙より短めの金髪で、赤いヘアバンドが目を引く、珍しいゆっくりだった。 従業員は、柵の中へゆっくりアリスを放り投げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 本能なのだろうか。 突如あらわれた同類を見るなり、ゆっくり魔理沙は大きな声でご挨拶。 だが、次の瞬間、表情が固まる。 「まっまっまっ、まりさ!!!」 弾けるように、二匹のゆっくりアリスは魔理沙の元へ。 「ゆ゛っく!?」 定番の台詞も、密着したアリスの頬に邪魔されて満足に動かない。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」 それでも懸命に台詞を口にしようと足掻くゆっくり魔理沙の上に、もう一匹のゆっくりアリスが容赦なくのしかかる。 もはや聞こえてくるのは、ゆっくりアリスの荒い息遣いのみ。 ほほをすりあわせて、よだれをこぼしていたアリスも、ぐいぐいと魔理沙を壁際に押さえつけて動けなくする。 壁に押し当てられた魔理沙は、苦しいのかようやく涙がぽろりとこぼれ、間近でその様子を見るはめになったゆっくり霊夢は柵の隅でガタガタと震えだす。 「い゛、い゛や゛あああ」 ゆっくりしていられない、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 それも、アリスの声でかき消されていた。 「ゆっくりイってね!!!」 紅潮した声でそろって叫ぶアリスたち。 途端に、ぶるぶると小刻みに震えだした。 「あ、ちょうど繁殖がはじまりましたね」 こともなげに解説をはじめる男。 「もうすぐ、押さえつけられている方が白目を見開いて、裂けそうなほど口を開いた驚愕の表情で固まってしまいます。 そうなると、この個体は徐々に黒ずんで朽ちるのみですが、その頭から蔓のようなものがのび、その先に複数の同種が実ります。ゆっくりアリスの素晴らしい点は、そうなるとすぐに次にゆっくり霊夢で生殖行動を続行することですね」 手馴れた口調で説明を重ねるが、一向に少女の反応はない。 「あ、お嬢さんにはちょっと嫌な光景でしたか。申し訳ありません」 少女の肩が心持ち震えていることに気づいて、男は慌てて謝罪する。 気丈に、少女は微笑んだ。 「いえ、そのことではありません。それに、お願いしたのはこちらですから、お気遣いなく」 男は頭をかきつつ、少女の気遣いに痛み入る。その間にも「ゆっゆっ」と気ぜわしい声が聞こえていた。 「では、こちらはここで切り上げましょう。次は繁殖に成功して増産したゆっくりを使った飼育事業についてご案内します」 異存はない。 「んほおおおおおおおおおおおおお!」 切なげな絶叫が響く部屋を後にする二人だった。 男に案内されたのは、屋外の小屋だった。 いや、二階建ての家屋に等しい大きさでは小屋と言い難い。むき出し木の骨組みと、壁の代わりに金網で覆っただけの粗末なつくりは、小屋そのものではあったが。 男は、ここを厩舎と呼んだ。 「今日は曇り空なので何も覆っていませんが、この生き物は日差しに弱いので、晴天時は上にシートをかぶせています」 そんな説明を聞き流しながら少女が厩舎に近づくと、中から獣のうなり声が聞こえてきた。 「うー! うー!」 奇怪かつ陽気な声に近づいてみれば、ゆっくりの顔の両脇に蝙蝠の翼を生やした、謎の生き物がふわふわと飛んでいる。 「肉まん種の、ゆっくりれみりゃです。ご覧の通りある程度飛べるので、この厩舎は全体を金網で覆っているのですよ」 「ずいぶんと機嫌がよさそうですね」 少女の言葉のとおり、れみりゃは鼻歌が出そうなニコニコ顔で飛び回っている。 「さっき、餌のゆっくり霊夢を与えたからでしょう」 「ゆっくりを?」 「ええ、出荷間近なのでゆっくり霊夢を餌に与えています。味がよくなるとのことで。れみりゃは高級食材などで引く手あまたですから、十分元がとれるといわけです」 なるほど、少女はれみりゃの毛並みの良さの理由がなんとなくわかった。 「大切に育てられているのですね」 「ええ、肉の質を高めるために運動も欠かさずやっています」 男の言葉が合図だったかのように、突然れみりゃが動きを止めた。 れみりゃの視線の先には、れみりゃよりも一回り小さな金髪のゆっくりが一匹。異様さでは類を見ないゆっくりだった。 翼らしきものはあったが、宝石を並べたような代物。瞳は見開いた真紅。 「ゆっくりフランです。」 男にその名を紹介された異種は、れみりゃの周りを満面の笑みで飛び回る。 れみりゃもあどけない笑顔で向き合ってはしゃぎまわっていた。 傍目には、仲睦まじい姉妹かナニカのように見えるのだが。 しかし、それは突然だった。 「ゆっくりしね!!!」 フランの口から拳のようなものが伸び、れみりゃの顔面中央に突きささる。 その拳に顔面をへこまされたれみりゃは呆然と身動き一つしない。 拳がフランの口に戻ってから、ようやくぽろぽろぽろと、とめどなく流れる涙。 「……! ……!!」 口は嗚咽にゆがんで、動転を言葉にする術を知らぬよう。 「うー! うー!」 ただ一匹、フランのみが楽しげに笑っていた。 フランは、再びれみりゃの正面に向きなおる。 「うあー! うあー!」 泣きながら逃げ回るしかないれみりゃ。 「ご覧の通り、なぜかフラン種の方が強いので、フランにはれみりゃを追っかけ回す役をさせています。他にもれみりゃの誘導など、とても助かる存在ですよ」 「牧羊犬みたいなものですか」 少女の言葉に、我が意を得たりといいたげな男の微笑み。 「さて、お次は最後。ゆっくり霊夢、魔理沙からの餡子の回収方法です」 ついにその時がきた。 少女は腕に抱えるそれをぎゅうと抱きしめる。 遠めにもわかる、巨大なゆっくりが部屋の中央の檻に鎮座していた。 その体躯は、高さだけでも少女の背を越していた。 横幅も広く、その重量は計り知れない。 「あれが、巨大種。ゆっくりレティです」 ぷっくりと膨らんだその生物を、男は指差す。 「雑食性ではゆっくりユユコに及びませんが、許容量ではゆっくり一でしょう」 この巨体を前に、男の声は説得力に満ち溢れている。頷くしかない少女。 ゆっくりレティは眠っているのか、目を閉じてくうくうと静かな呼吸音を奏でていた。 遠目には可愛らしいのだが、巨体の異様さは拭いがたい。 「今、先ほどの食料を消化中なのでしょう。そろそろ、お腹が空いて起きる頃です。ちょっとお待ちください」 その言葉を残して、男が部屋から姿を消す。 しばらくして、男はゆっくり霊夢を一匹抱えて戻ってきた。 「おじさん、今日もゆっくりしようね!!!」 その言葉と、黙って抱えられている様子に、ゆっくり霊夢の男への信頼が伺える。 恐らく、その無垢な信頼感は繁殖から育てたゆえだろう。 推察を重ねる少女へ、男は静かに語りかけてきた。 「では始めますよ」 少女の頷きを確認するなり、レティの檻に放り投げられるゆっくり霊夢。 「ゆっ、ゆっくり!?」 遠ざかっていく、ゆっくり霊夢の驚愕の表情。 レティの体躯にあたり、ぽよんとはねて転がる。 同時にのっそりと動き出すレティ。 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 一目散に檻の入り口へ。 しかし。 「早く扉を開けてね!!! 」 すでに男によってロックされた後だった。 地面が揺れる。 ゆっくりレティが飛び跳ねながら近づいてきていた。 「おじさん! ここから出して! もっと、ゆっぐりじだい゛いいいい!!!」 「レティ種は鈍重なので扱いやすいのが利点となります」 扉越しの哀願も、男の穏やかな眼差しを動かすことはできない。 やがて、ゆっくり霊夢の上に差す巨大な影。 レティが、真後ろにいた。 ゆっくり霊夢の顔がくしゃくしゃに歪むのと同時に、開けっ放しのレティの口から分厚い舌がのびる。 霊夢は瞬時に舌に巻き取られた。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 悲しげな絶叫を残して、ぺろんとレティの口の中へ。 少女は見た。 飲み込もうとしたレティの口の中にうごめく、何匹ものゆっくりたちを。 レティのベロに抑えられて身動きもできず、滂沱の涙を流して視線を男に向けている。 「レティ種は、リスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える癖があるんです。最長で二週間は保存されていますね」 ゆっくりたちの視線に、男は興味を示さない。少女に自らの事業を説明することの方に傾注している。 「餡子の回収は、レティが熟睡した後に、後ろに穴をあけて搾り出します。定量を絞ったら、塞いでまたゆっくりを与えるのです。秘伝のタレを継ぎ足し、継ぎ足し使っている焼き鳥屋を思い浮かべてください」 言われてみれば、寝床に戻るレティの後頭部に隆起部分が。 「ちなみに、一度レティ種に消化させることで、甘味がまろやかになって質がよくなることと、混ざり合うことでの品質の均一化が図れます。生産者にとって大切なことは、量産性と高品質、そしてその維持です。このシステム構築は、私の ゆっくり業者としての矜持なのですよ」 誇らしげな男の言葉が少女の印象に強く残っていた。 職業人魂。 男の言葉を、少女は強く理解できる。 なぜなら、自分も人形という分野で職人的な魂に触れているからかもしらない。 そう。少女は、アリスだった。 可憐な彼女には場違いなその加工所を後にしたアリスは、夕焼けの空に時間の経過を知る。 「今日はずいぶんと大人しかったわね」 一息ついて、見学の間中、両手に抱えていたソレに今日初めて話しかける。 「それにしても、いいお話が聞けたわ、魔理沙」 アリスの腕の中でぶるぶる震えているその生き物は、正確には魔理沙ではない。 数ヶ月前、魔法の森で捕まえたゆっくり魔理沙だった。 「でも、今から震えてどうするの? 魔理沙をあそこに預けるのは、明日よ」 アリスの真顔に、冗談のニュアンスは欠片もない。 「い゛や゛あ……」 ゆっくり魔理沙からこぼれる弱弱しい悲鳴を聞きつけて、アリスは嬉しげな顔を紅潮させる。 「だって、私があんなに優しくしてあげているのに、あなたは逃げ出そうとするんですもの」 言いながら、息も荒くなる。 「だったら、あそこでゆっくりしていってもらうだけよ」 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだくない、じだぐないよおおおお!」 「あらあら、ゆっくりにあるまじき言葉ね」 涙やらなにやらで醜く濁ったゆっくりの言葉を、恍惚の表情でまぜかえすアリス。 「どうしても嫌だというのなら、仕方ないわね。その代わり、わかっているかしら?」 「うん! つねったり、踏んだり、……しても、いいから!」 しゃくりあげながらのゆっくり魔理沙を、アリスは一転して慈母の笑みで見つめる。 ぎゅうと、愛情をこめて抱きしめつつ話しかける。 「そこは『いいんだぜ』にしなさい」 「わっ、わかったぜ!!!」 「ああ、本当に可愛い、魔理沙!」 宵闇が迫る夕べを背景に、一つに重なる影。 何やら、それなりに幸せそうな一人と一匹であった。
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ゆっくりと紐 体内受精をしたゆっくりれいむと、それを見守るゆっくりまりさ。 とうとうここまで来たのだなあ、と、感慨深く思い起こす。初めてこいつらと 出あったのは、春の桜が散り切る前のことだったろうか。ゆっくりの家宣言をさ れた俺は、その唐突な内容よりも愛らしい彼女達の仕草に心を奪われてしまった のだ。 だって可愛いのだもの。 毎日のようにご飯を食べさせ、ワガママを聞き、ゆっくりとさせてやる毎日。 頼っているという自覚すらないのだろうが、それでも俺は幸せで、ゆっくりと できた。 冬も間近、二匹の初めての子が生まれた。枝にまるまると実った彼女達は、本 当に幸せそうに笑っていた。俺自身家族が増えたことに大層喜び――その頃には 『おにいちゃん』ではなく、『おとーさん』と呼ばれ始めていた――、さらにゆ っくりとした暮らしを深めていた。 だが俺の稼ぎはそれほど多くはなく、多数の家族を養えるほどではなかった。 ゆっくりの姉達は一様に、父母と新しい子供を養うことを選択し、次の子供が生 まれると、なごり惜しげに皆旅立って行くのだった。 悲しい出来事もあった。 どこからか入り込んだゆっくりぱちぇりーに、生まれたての子ゆっくりが連れ 去られ、多数が行方不明になったこともあった。他のゆっくりが入り込み、子供 たちの何人かが犠牲になったこともあった。それは不幸ではあったが、家族の絆 をより深め、こうして新たな幸せを迎える原動力ともなったのだ。 世の中には、ゆっくりを食べたり、虐待したりする人がいるらしい。見つけ次 第に殺してしまうのも居る。だがどうだ、ゆっくりはこうしてゆっくりしている だけで、果てしなくゆっくりをもたらしてくれると言うのに……。 ・ ・ ・ 「うまでるよ! もうずぐばぢざとでいぶのあがじゃんがうばでるよ!」 顔を真っ赤にして、それでも幸せそうに叫ぶ母れいむ。父まりさと子供たちに 囲まれた彼女に近づいて、出産の手助けをしてやる。 「れいむは出産初めてだよな?」 「う゛? 子供だぢならだぐざん産んだよ?」 違う違うと手を振り、俺は簡単な説明をする。 「枝から生まれる子供と、おなかから生まれる子供は違うんだ。今回みたいにお なかから生まれる場合、何の準備もしないと、危険が危ないからゆっくりできな いんだよ!」 そう告げられた一同は、「ゆっくりしたいよぼおお!」「あかじゃん! まぢ ざのあがぢゃんが!」「ゆっくりなんどがぢでえええ!」などと騒然とし始める。 「でも、これさえあれば大丈夫だよ!」 出産のために用意してきた道具を取り出す。泣き叫ぶ声が歓声に変り、俺はそ の道具を母れいむに巻き付けた。 「おとーさん、これなに? ゆっくりできるもの?」 「ああそうだよ、ゆっくりできるよ……とさて、聞いてくれ」 「何なに?」「ゆっくりする?」 「これはね、『紐』というんだ。出産をするときに、赤ちゃんが勢い良く飛び出 すからね! 怪我をしないように巻きつけてあげるんだよ! みんなも怪我した らいけないから、つけてあげるね」 信頼している『おとーさん』のセリフに、誰一匹疑うことすらなく、『紐』を 体に巻きつけるゆっくり達。 「あ、まりさはこっちに来なさい。ゆっくりと出産を見れるようにしてあげるか らね!」 「わ、わかった! ゆっくり赤ちゃん見たいよ!」 俺は父ゆっくりまりさを、母れいむの目の前に固定した。俺は出産補助装置の 概要を、皆に説明する。 装置に固定された母れいむは、ゆっくりしながら出産することが出来る。そし て出産された赤ゆっくりは、赤ゆっくりゆっくり装置によってゆっくりさせられ る。子ゆっくりゆっくり装置は、母れいむの目前、固定された父まりさのすぐ体 下に設置されている。 「さあそろそろだな。みんな、動くと危ないから動いちゃだめだよ!」 「「「ゆっくりじっとしているね!」」」 「ゆ゛っ! ゆ゛っ! ゆ゛ぐりいいいいい!」 息も絶え絶え、頬を真っ赤にしながら、母れいむの出産が開始された。母れい むに巻きつけた『紐』には多少ゆとりがあるため、この程度で怪我をすることは ない。 「赤ちゃんだ! れいむの妹だよ!」 「違うよ、まりさの妹だよ!」 「ゆっくり! ゆっくり生まれていってね!!」 皆の応援のなか、生まれながら声を上げる赤ゆっくり。 「ゆ、くり、……う?」 違和感に気付いたのだろう、慌て始める。 「ゆ、おかあしゃんゆっくり出来ないよ! お顔がひたい、ひたいよぅ!」 「ば、ばだじのあがじゃん! どぼじだぼおおお!?」 「ゆ、ゆっくりがんばってね!」 だがもう出産は止まらない。勢い良く子供を産み出す母れいむ。 「い゛っ! ゆ゛っ! ぐりじでぶううううううううううう!」 母れいむに巻きつけられた鋼鉄の紐に輪切りにされ、絶命したまま勢い良く飛 び出した赤ゆっくりは、そのまま赤ゆっくりゆっくり装置にその亡骸を晒した。 「う゛あああ! でいぶどぶりぢいいいいいなあがじゃんがああああ!! あが じゃん! あがじゃっ!?」 そのショックが次の出産を早めたのだろう、下腹部が膨張し、新たな赤まりさ が顔を覗かせる。 「うっう……。お、おかあさんがんばって!」 娘達の応援に、今失ったばかりの命を思うゆとりも与えられず、出産を開始す る母れいむ。だがすでに赤まりさの顔には行く筋もの切れ込みが入っており、 「ゆっぐうううああああぶっ!!!」 生を得るのと同時に死に誘われた。 「うばああああああああああああ! あが! でいぶのあがああああ!!」 「あがじゃあああんんんんんんんん!!!」 装置に横たわり、ぴくぴくと震える、赤まりさだったもの。 ゆっくりと生まれ、ゆっくりと育ち、ゆっくりと旅立つはずだった、幸せなゆ っくりとなるはずであった餡の塊は、何を言うこともない。 絶望に染め上げる家族に向けて、僕は慰めの言葉を紡ぐ。 「もしかしたら、産むのが速すぎたのかもしれないな。可哀想に……ゆっくりし たかったんだろうにね」 その言葉にびくりと体を震わせる反応する母れいむ。目の前の我が子の亡骸に、 絶望の表情を浮かべる父まりさ。声すら立てずに涙を流すゆっくり一家。 そんな彼女達の心を癒すために、ビデオを見せてやる。 「おや、あれは何かな……?」 母れいむの、昔生んだ娘達の姿が、そこには映し出されていた。ビデオの概念 を知らない一家は、まるでその中に生活しているように見えることだろう。昔、 唐突に現れたゆっくりぱちぇりーにさらわれたはずの、生まれたての我が子。彼 女達の元気な姿を見せられた母れいむは、彼女達が生きていることに――今の状 況を忘れているわけではないだろうが――歓喜した。 喜びもつかの間、ゆっくりぱちぇりーによっていたぶられ、無残な姿を晒す赤 ゆっくり。その衝撃は、またも出産を早めたようで、何とか赤ゆっくりが生まれ ないように暴れだす母れいむと父まりさ。 「だめ! ゆっぐり! もっどゆっぐりじでえええええ! うばでだいで! う ばれないでぼおおお! ゆっぐりじでよぼおおお!」 「がばんじででいぶ! がばんじだいどまでぃだどでいぶのごどぼがああああ!」 ゆっくり達は気付かないが、装置は時間とともに母れいむを締め付け、出産を 強要する作りになっている。装置に固定されており、そもそも出産をコントロー ルする術も知らないであろう母れいむは、またも生まれながら死に絶える赤ゆっ くりを目の当たりにせざるを得なかった。 ビデオからは延々と、巣立ったはずの子ゆっくり達の断末魔が流れつづけ、生 まれては死んでゆく赤ゆっくりの残骸は増えていった。 ・ ・ ・ 時間を掛ければこんなにも「ゆっくり」させてくれる存在になるのだ。 次回の出産のためにも、信頼を損ねることは出来ないのだが、彼女達の信頼を 踏みにじる時のことを考えると、とてもゆっくりとした気分になれるのである。 このSSに感想を付ける
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※ご覧いただく前の注意書き※ すっきり描写あり ゆっくり現代入り 以上です。それでは、お楽しみ頂けると幸いです。 ※1/16 fuku4847を一部加筆して、再うp致しました。 by 作者 よし、天麩羅にしよう。 珍しくお金があったので、今日の昼食はリッチにいくことに決めた。 普通、大学の近くにはラーメン屋や定食屋など色々な店がある……はずなのだが、うちの大学の近くには何故か少ない。 電車で1駅行った、うちの大学より何倍も大きい大学の学生街や、反対方向へ1駅の大きな街には食事処が沢山あるのであまり不自由はしていないけど。 普段は学内のコンビニで調達するか電車で食べに行ってしまうが、今日は前から行ってみたいと思っていた天麩羅屋に行くことに決めた。 3限が休講だったので、授業は午前中で終わりである。昼休みに食べに行くと混むだろうから部室に寄り、1時間ほど潰してから店に向かった。 行こうと思っている天麩羅屋は、大学から少し行ったところにある。普段大学の近くで食べるときはファーストフードが殆どなので、なんだか新鮮な気分だ。 大学を出て10分ほど歩き、目当ての天麩羅屋に着いた。 天麩羅は美味しかった。野菜天や海老天をはじめ、どの天麩羅も衣がサクッとしており、塩にも天つゆにも良く合った。 食べ終わって何となくメニューを見ていると、ある文字に目が止まった。 『ゆっくり』 ゆっ……くり? あのゆっくりか? しばらく前に出現した人間の頭みたいな饅頭か? メニューを見てみると、餡子やカスタード、生クリームといった文字も見受けられる。 これはゆっくりの中身だ。ということは、この店はゆっくりの天麩羅も扱っているのだろう。 しかし……どういう物なんだろうか? とりあえず店主に聞いてみることにした。客は僕以外にいなかったので、聞いても営業に差し支えは出ないだろう。 「あの、すいません」 「はい、なんでしょう」 「この『ゆっくり』って奴なんですけど、やっぱりあのゆっくりなんでしょうか?」 「ええ、当店ではゆっくりの天麩羅を扱っておりまして、デザートとして好評を頂いております」 「そうなんですか。饅頭としては食べたことがあるんですが、天麩羅にしている店があるなんて初めて知りましたよ」 「扱っているのは、この辺だとウチぐらいなもんでしょうねー。この辺じゃなければ何軒かは取り扱っていると聞いています」 「へえー。あの、他のに比べて随分と安いんですが、これはどうしてなんですか?」 「ああ、それはですね、他の天麩羅と違って原材料がタダ同然、というか本当にタダなんですよ。捕まえてくればいいんですから」 「そうなんですかー。……じゃあ、餡子とカスタード、それと生クリームを1つずつ下さい」 「わかりました。ちょっとお時間を頂きますが、宜しいですか?」 「問題ないです」 「じゃあ、ちょっと待っててください」 店主は奥に入っていった。 携帯をいじっていたら、奥から声が聞こえてきた。ゆっくりの声だ。 「ゆっ、れいむすっきりしたくないよ! あかちゃんつれていかれるのやだよおおおおお!」 「いやああああ! あいのないすっきりなんてとかいはじゃないわああああ!」 「むぎゅー、ぱちぇもあかちゃんとられるのいやよおおおおお!」 「まりさだってすっきりしたくないんだぜ! でもぶるぶるされるとどうしようもないのぜ!」 「ほら、さっさと子供作れ」 「「「「んほおおおおおおお!!!」」」」 「「「「すっきりー!!!」」」」 「ゆう、ゆう……。またすっきりしちゃったよ……」 「でも……。やっぱりあかちゃんはかわいいわね! とかいはなこになってね!」 「そうだぜ! こんどこそあかちゃんをまもってあげるんだぜ!」 「むきゅー、みんなでちからをあわせれば、おじさんからあかちゃんをまもれるわよ」 「「「そうだね! えいえいゆー!!」」」 どうやら親ゆっくり達が強制的に子供を作らされているみたいだ。ということは、子供を使うのだろう。 強制すっきりから1分半ほど経過した。 「ゆゆっ! あかちゃんのおめめがあいたよ!」 「もうすぐうまれるんだぜ! うれしいんだぜ!」 「みんなにこにこしててかわいいわね! とってもとかいはよ!」 「むきゅん、あかちゃんたちゆっくりしていってね!」 もうすぐ赤ん坊が生まれるのだろう。親ゆっくり達は嬉しそうである。 だが。無慈悲にもその嬉しさを粉微塵に打ち砕く言葉が告げられる。 「はーい、談笑中の所た~いへん申し訳ありませんが、これより赤ちゃんを1匹残らず頂いていきまーす。 いつもの通り、必要な赤ちゃん以外はぜーんいんブチ殺しますので、皆ゆっくりしていってね!!!」 「いやぢゃあああああ!!! あがじゃんもっでいがないでえええええ!!!」 「ゆっ、まりさたちのあかちゃんはまもってみせるのぜ! じじいはあっちにいくんだぜ! ……ごべんなざいいいい!!! もっでいがないでええええ!!!」 ブチブチブチイッ 「いぢゃいよおおおおおおお!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ぐぎをどだだいでええええええ!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!! ごんなのどがい゛ばじゃないわあ゛あ゛あ゛!!! ……あ、あがじゃんごろざないでええええ!!! おねがいじまずうううう!!!」 「むぎゅうううう!! ばぢゅりーだぢにぞだでざせでぐだざいいいい!!! おねがいでずがらああああ!!!」 グチャッ 「ゆぴっ」 「ゆぶっ」 「ゆぴゃっ」 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! あ゛がぢゃんんんんんんんん!!!!」」 「「ばだばじべでの゛ごあ゛い゛ざづもずりずりもじでな゛い゛の゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」」 ――カウンターからは見えないが、どう考えても奥は阿鼻叫喚。 茎を引き千切り、まだ生まれていないゆっくりを一匹一匹握り潰す音。赤ん坊の短い断末魔、そして親達が泣き叫ぶ声。 生きてる赤ん坊は親と初めての対面ができないまま全て連れ去られ、他の赤ん坊は生まれる前に全て潰されてしまった。 ゆっくり達にとってはまさに地獄である。 「ほい、じゃあお前らは箱で大人しくしてろよ」 「あがぢゃんがえぢでええええ……」 「ゆぐっ、ゆぐっ……。ごべんねえええ……」 「あがぢゃんだぢ、おがあざんだぢをゆるぢでねえええ……」 「むぎゅー……」 「お待たせしました」 子ゆっくり3匹を持った店主が戻ってきた。すっごく良い顔をしているように見えるのは僕の気のせいか。 「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 子ゆっくり達は生まれて初めての挨拶をしてきた。……最後の挨拶になるのだろう。 「それを使うんですか?」 「はい、当店では生まれたてホヤホヤのゆっくりを使います。 れいむ種が餡子、ありす種がカスタード、ぱちゅりー種が生クリームです」 「いつも注文を受けてから作ってるんですか?」 「凄く混んでるときは冷凍のを使ったりもするんですが、なるべく生まれたてのを使うように心がけています」 なるほど。究極の産地直送というわけだ。 「ゆゆっ? おじちゃん、このまありゅいのなあに?」 「ああ、それはお鍋っていうんだよ」 「むきゅん、おにゃべしゃんのなきゃにありゅのはきっちょおふりょね!」 「そうそう。さすがぱちゅりーは頭がいいなあ」 「ゆゆっ! おふりょできれいきれいちゅるのはとっちぇもときゃいはにぇ!」 「さあ、お風呂に入る前にこの中に入ってくれ」 店主は3匹に衣をつけ始めた。 「ゆっ! にゃめりゅとおいちいね! ぺーろぺーろ……」 「でもべちゃべちゃできもちわりゅいわ!」 「ありちゅ、きっとすちぇきにゃれでいになるちゃめにはひちゅようなことにゃのよ」 「ゆ、ゆん! ちょっととぼけちゃふりをちただけよ!」 衣をつけ終わり、いよいよ高温の油にダイブする時間がやってきた。 「れーみゅがいちばんしゃきにおふりょにはいりゅよ!」 「れいみゅはれでーふぁーちゅとっていうこちょばをちらにゃいのね! ありちゅがちゃきなにょよ!」 「れーみゅがしゃきだよ!」 「むきゅー、おふりょはおおきいんだきゃら、みんないっちょにはいりまちょうよ」 「ゆう……。ごめんにぇ、ありちゅ! いっちょにおふりょにはいりょうね!」 「ゆ、ゆん! ときゃいはにゃありちゅがいちびゃんちゃきにはいりゅのがのぞまちいけど、どうちてもっていうにゃらいっちょにはいっちぇあげちぇもいいわよ!」 「むきゅん、ふちゃりとも、なきゃよくちゅるのがいちびゃんよ」 饅頭たちの漫才を眺めている間に、揚げる準備が整ったようだ。 「それじゃあ、皆一緒にお風呂に入れるからな。仲良く温まれよ!」 「ゆっ! わかっちゃよ!」 「はやきゅいれちぇね! おふりょできれいきれいちて、もてきゃわちゅりむのぱーへくとぼでーになるんだきゃらね!」 「むきゅー、みんにゃではいりゅのはたのちちょうね!」 「じゃあ、行くぞ」 「「「ゆゆーん♪」」」 「じゃあな」 ボチャン 「「「ゆっ?」」」 「あ゛、あ゛じゅいよお゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「や゛べぢぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 「よしよし、ちゃんと揚がれよー? おいっしい天麩羅になるんだぞおー?」 うおー、すげ。見て楽しむ面もあるのか。まあ、これを楽しいと思うかは人によるんだろうけど。 「ゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛!!!」 「ごんな゛の゛どがいばじゃないばあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛!! みゃみゃだじゅげでえ゛え゛え゛!!!」 「お母さんは助けになんて来てくれないよお? お前らを喜んで差し出したんだから。 君たちは親にとっていらない子なんだよ! ゆっくり諦めてね!」 「ゆえ゛え゛え゛え゛ん!!!」 「ぞんなのう゛じょよお゛お゛お゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛ん……」 揚げられるとやっぱり死ぬんだろうか。聞いてみよう。 「あの、揚げるとやっぱりゆっくりは死ぬんですか?」 「それは個体によりますね。体力の無いぱちゅりー種なんかはほとんどが死にます。 れいむ種とかまりさ種なんかは体力もありますし、衣で保護されてるので意外と死なないんですよ。 踊り食いみたいで食べていて楽しい、と仰るお客さまもいらっしゃいますよ」 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 「ぢぬう゛う゛!! ぢんぢゃう゛わ゛あ゛あ゛!!!」 「ぶぎゅう……。ぶぎゅーん……」 そーなのかー。しかし、店主楽しそうだなー。顔が生き生きしてるよ。 「お待たせしました。こちらがゆっくりの天麩羅です。左かられいむ、ありす、ぱちゅりーとなっております」 揚げたての天麩羅が出てきた。生まれたばかりなので小さくて丸っこい。 「では、頂きます」 れいむから食べることにした。 パクッ 「い゛じゃい゛よお゛お゛!!!」 うおっ、まだ生きてんのかよ。衣で包まれているため、声はくぐもっていた。 ――そうだ。塩塗ってみよ。 「ゆぎゃあ゛あ゛っ!!! ぢみるう゛う゛う゛う゛!!!」 おお、こいつは面白い反応だ。 パクッ 「やべじぇえ゛え゛え゛え゛!!!」 中身が餡子だから当然甘いのだが、しつこくない甘さだ。衣もサクサクしてるし、はっきり言って旨いな。好評というのも頷ける。 パクッ (ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……) 口の中からかすかに呻く音が聞こえてきた。なるほどなあ。踊り食いかあ。 いやあ、旨かった。次はありすにしようかな。 ありす天を食べようかと思った時、思いついたことがあったので衣をはがしてみた。 すると、中には目を一杯に見開き歯を食いしばっている、『苦悶の表情』という言葉を絵にしたらまさにこれだという顔をしているありすがいた。 ゆっくりに苦痛を与えると甘くなると言うが、これは相当甘くなってるだろう。ただでさえ赤ん坊は甘くて旨いと言うし。 では、いただきます。 ぱくっ 「ゆぎゃあああああ!!!」 意外とカスタードもいけるね。 パクッ 「ごんなのどがいはじゃないばああああ!!!」 ぱくっ (もっちょ、ゆっ、きゅり、ぎゃああ、ゆうっ、ゆっ……。) 奥歯ですり潰してやった。さて、最後はぱちゅりー。 パクッ 「……」 ……おや? 反応が無いぞ? 衣を取って、ぱちゅりーをつついてみても反応が無い。 店主が言っていた通り、体力の無いぱちゅりーは耐えきれずに死んでしまったのだろう。 パクッ これも美味しかった。ただ、他の2匹より甘みが幾分強いので、もしかしたら口に合わないと言う人もいるかもという感想だった。 「ごちそうさまでした。いやあ、予想以上にゆっくりは旨かったですよ」 「そうですか! 捕まえさえすればお家でも出来ますので、是非やってみてください。 調理法は普通の天麩羅と同じです。ゆっくりの繁殖法は分かりますか?」 「大丈夫です」 「それはよかった。毎月1回ぐらいの限定で目玉や飾り、もみあげの天麩羅なんかもお出し致しますので、宜しければまたお越しください」 「目玉……ですか?」 「はい、目玉です。目玉といっても寒天なので、食べても大丈夫ですよ。独特の触感がお客様にウケてます。他のも美味しいですよ」 「色んなのがあるんですねー。ありがとうございます、また来ますよ」 「ありがとうございましたー」 お金を払って店を出た。思ったより値段が良心的だったのでまた来ようと思う。 帰りに天麩羅粉まで買ってしまった。そのうち家でも試してみよう。 家に着いた。っと……? 窓が割れてる? 急いで鍵を開けて中へ入る。中には……いた。ゆっくりれいむとゆっくりまりさ、そしてその子供。 「ここはまりさたちがみつけたゆっくりぷれいすだよ! おじさんはでていってね!」 「でていっちぇね!」 「たべものをくれたらいてもいいよ!」 「おきゃねでもいいよ! いちまんえんだよ!」 ――どうやら、夕飯も天麩羅を食べることになりそうだ。 おしまい あとがきのようなもの お読み頂き、ありがとうございました。 前回書き忘れましたが、感想をくれた方、ありがとうございます。今後も精進していきたいです。 元ネタはアイスクリームの天麩羅です。一回だけ食べたことがありますが、まあアリかな、という感想でした。 それにしても、「天麩羅」とか「蕎麦」って字は旨そうです。書いてて食べたくなってきたので、明日食べに行きたいと思います。 あとがき追記 うpした後に天麩羅を食べに行ったんですが、行くつもりだった店が無くなっていました。ガッカリです。 さらに追記 何回か読んでいたら加筆できそうなところがあったので、一部加筆致しました。 あと、作者名も決めました。今後とも宜しくお願い致します。 今までに書いたもの お星様になってね! すぃーチキンレース by 天麩羅蕎麦
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※嘔吐描写注意 「ゆっくり食べてね!」 どこかの場所、いつかの時間。 一匹のゆっくりが、一心不乱に大量の何かを食べ続けている。 その様子を、イスに腰掛けてじっと見つめる男が一人。 「はぐはぐはぐはぐがふがふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 汚らしい食べ方のためにゆっくりの周りはぐちゃぐちゃになっていたが、そんな事は気にもせず、延々と食べ続けるゆっくり。 男もその様を叱る事もなく、ただじっと眺めていた。 「がふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげふ! ゆげぇぇぇ……」 不意に、ゆげゆげとアンコと何かの混じったものを吐き出すゆっくり。 びちゃびちゃと先ほど食べていたものを汚していくその音は、人間のするそれと全く同じものである。 違うのは、吐き出すものの色が黒い事と、発するのが甘い臭いだという事だけだ。 「ゆげぇぇぇ……え”ふっ! ゆ、ぜびぃ……ぜびぃ……ゆぅ……がふがふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 ある程度吐いて落ち着いたゆっくりは、また山を崩す作業に戻った。 食べすぎで吐いたというのに何故か更に食べるゆっくりをこのまま放置しておけば、吐き戻しすぎて死ぬだろう。 だが、死へ確実に近づいているゆっくりを止める事もなく、男はじっと見続けている。 「がふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげぇ! え”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”……」 案の定、もう限界を超えているゆっくりは、それほど食べない内にまた吐き戻してしまった。 パンパンに膨らんでいた顔が、みるみるうちにしぼんで元の下膨れ饅頭へと戻っていく。 その目にはうっすらと涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。 「げほっ、がぼっ! ゆ”……ゆげぇ……」 荒い息をついて、ぐったりとその場に潰れるゆっくり。 それを見て、これまでじっと見つめていた男が靴音高く近づいてきた。 「んげほっ、え”ほっ……ゆ、ゆっぐりだべるよ……だから、ごっち、ごないでね……」 青い顔に恐怖の色を浮かべて、男から少しでも離れようと試みるゆっくり。 その様子を見て何か思ったのか、男はその場に座り込んだ。 ゆっくりの顔から恐怖の色が消え、僅かに血色を取り戻すと、そのまま山に近づいていった。 「ゆっぐりだべるよ……だべるよ……」 必死の形相でじりじりと山に近づいていくゆっくり。 僅かに動くだけで戻しそうになりながらも、近づく事はやめない。 「だべるよ……だべっ! ……え”ろろろろろろろ……」 長い時間をかけて山のふもとまで来たゆっくりは、食べる直前に自分で吐き出したものの臭いに負け、その場にアンコをぶちまけ始めた。 ドボドボと音を立てて凄まじい勢いで流れ出るアンコは、しばらく 「んげろろろろろろ……おげぇぇぇ! げふっ! え”ふっ! ゆべぇぇぇぇぇ……」 元の大きさに戻っても吐き続けるゆっくり。 顔色は紙の様に白くなり、顔には何の表情も浮かんではいない。 後数分で、顔中のアンコを吐き出してしまうだろう。 ここはゆっくりの処理場。 ここに連れて来られたゆっくりは、ここにある仲間の死がいを全て食い尽くすか、即座に殺されるかのどちらかを選ぶ事となる。 ほとんどのゆっくりは死がいを食べる方を選ぶが、どれもが食べきれずに終わる事となる。 数百匹分のゆっくりの死がいは、一人や二人では食べきれないほどに多量にあるのだから、元から不可能な事だ。 それでも挑戦をやめないのは、ゆっくりが間抜けだからなのか。生きたいという想いが強いからなのか。 それは人間には分からない。 男は『それ』をつまみあげて山に投げ置いた。 てっぺん辺りに落ちた顔は、周囲と同じく苦悶の末に死んだ事を物語っている。 そこまでの苦しみを味わっても、決して自分から死にたいと言うゆっくりがいない事が、男には不思議でたまらなかった。 ――次のゆっくりに、ちょっと聞いてみようか。苦しんだ末の死と、苦しむ事ない一撃の死と、どっちが良いのかを。 そう考えつつ、男はゆっくりと部屋を出て行った。 おしまい ゲロ吐くゆっくりいじめものを短くまとめてみようと思ったら、こんなんが出来ました。 なんだこれ。 by cyc=めて男 このSSに感想を付ける
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ここはとあるゆっくりプレイス。辺りは草原に囲まれ、近くを川が流れています。 ここに数日前、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのつがいが辿り着きました。 彼女達は朽ちかけた木の根の作った穴に暮らしていましたが、その木は腐っていて今にも崩れてしまいそうです。 また、穴自体とても小さく、れいむとまりさ二匹でぎゅうぎゅうでした。 最初はそれでも良かったのですが、今はそうは行きません。れいむの頭には、小さな芽が出ているのです。 そう、家族が増えるのです。 「ゆゆ~、このおうちも、もうながくすめないよ…」 「うん、そうだね…」 「まりさ、あしたからはがんばってね!」 「おっけー、まりさにまかせて!」 巣の中にはたくさんの食料が集めてあります。この数日、二人で頑張って集めたのです。 これで数日は、餌を集めなくても、あることに集中できるでしょう。 「まりさがおうちのつくりかたをしってるなんて、れいむすごいうれしいよ!」 「れいむとあかちゃんのために、せかいいちゆっくりできるおうちをつくるよ!!」 翌朝。まりさは河原から石を運んでいます。植物の蔓を石に巻きつけ、端をしっかり噛んで引きずっているのです。 「ゆーっくり!ゆーーっくり!!」 今運んでいるのはゆっくりの半分もありそうな大きな石。皆さんも、自分のお腹の大きさまである石を運ぶのは大変でしょう。 それを、まりさは新しいお家のためを思い、一生懸命運んでいるのです。 「ゆゆっ!?まりさ、がんばりすぎだよ!れいむもてつだうからね!!」 それを見たれいむはまりさをたすけようと、石の後ろに回りこみます。後ろから押してあげれば、まりさが楽になると思ったのです。 「だめだよっ!!!」 「ゆっ!?どぼじでぞんなごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛!?」 しかし、まりさは喜ぶどころかれいむに怒り出します。れいむはまりさを助けたいだけだったのに、怒られてしまって涙を流しています。 「ゆっ、れいむ、よくかんがえてね!れいむはおかあさんなんだよ!!れいむだけのからだじゃないんだよ!!」 「ゆっ、ゆぅ…」 「もしれいむがけがをして、あかちゃんがしんじゃったらどうするの!あかちゃんがかなしむよ!まりさだってかなしいよ!」 「まりさ…ごめん…」 「それに、まりさはこんなのぜんぜんたいへんじゃないよ!れいむががんばれー!っていってくれたら、まりさはひゃくにんりきだよ! だかられいむはゆっくりまりさをおうえんしててね!」 「ゆっ…わかったよ!れいむ、ゆっくりおうえんするよ!!」 それから、まりさは頑張って石を運びました。れいむはまりさを応援し、まりさの為に美味しい草や蟲を持っていってあげました。 「ゆふーーーっ!!んひーーーっ!!んふーーーっ!!」 夕方。まりさは頑張って石を運んだので、とっても疲れてしまいました。 汗まみれの身体で、白目を剥いて、舌を突き出し、激しく空気を吸い込んでいます。 それを見たれいむが慌てて近寄ります。 「ゆゆっ!!まりさ、ゆっくりしなさすぎだよ!!」 「ゆー、れいむの、ためなら、これくらい、あっと、いうまだよ!!」 「ちゃんとやすまないとだめだよっ!!まりさがたおれちゃったらどうするの!?あかちゃんたちがかわいそうだよ! それに、れいむだってとってもかなしいよ!!」 「ゆ…!ご、ごめんね、れいむ!」 「ゆっ、はんせいしてるならいいよ!それにれいむもおひるにおこられたし、おあいこだよ!」 「ゆ…れいむぅ~!」 二匹は赤ちゃんのため、れいむのために、静かに、身体を大きく動かさないように頬ずりをしました。 れいむの頭の芽が少し大きくなっています。 その夜、二匹は狭い木のお家の中で、寄り添って眠りました。 「ゆーっくり!ゆーっくり!」 翌朝、朝ごはんを食べてすぐに、まりさは新しいお家を作りにきました。河原から拾ってきた大きな石を、円形に並べているのです。 大きな石は十分に集めたので、もうまりさが河原まで大きな石を探しに行くことはありません。 まりさはれいむのために、一生懸命働きました。 お昼になると、まりさが頑張っているおかげで、円の3/4ほどがすでに出来上がっています。高さは一メートルほどでしょうか。 一方、れいむはその様子を見守りながら、日向ぼっこをしています。頭の芽はまた少し伸び、蔓と呼んでも良いくらいです。 「ゆ、まりさ!もうおひるだよ!すこしきゅうけいしようね!」 「わかったよ、ゆっくりやすむよ!!」 まりさはれいむの傍に寄り添いました。ずっとお日様に当たっていたれいむはポカポカ暖かく、まるでお日様のような匂いがします。 「ゆゆっ!?れいむ、あたまのつるがすこしふとくなってるよ!」 「ほっ、ほんとう!?」 「ほんとうだよ!こぶみたいになってるよ!」 まりさの言うとおり、れいむの頭の蔓には数箇所のふくらみが出来ています。ここのふくらみが大きくなり、やがて赤ちゃんになることを二匹は知っていました。 嬉しそうなれいむを見て、まりさもやる気が沸いてきました。 「れいむとあかちゃんのために、りっぱなおうちをつくるよ!!」 その日の夕方、石垣で作られた円はほぼ完成。大人ゆっくり一匹が通れるくらいの隙間を残していました。 ここは、れいむやまりさの玄関となるのです。 まりさは石の上によじ登り、慎重に石の隙間に木の枝や木の葉を渡していきます。そして、両端の上から石を置いて固定しました。 その上にいくつか石を置いてみましたが、崩れることはありません。これで玄関の完成です。 「ゆゆーーー!!すごいよまりさ!ひとりでここまでつくっちゃうなんて!!」 家の中ではれいむが大喜びしています。まだ屋根もなく、石は隙間だらけですが、それはこれから埋めるだけ。 家の広さはれいむとまりさ、たくさんの赤ちゃんが入ってもさらに余裕がありそうです。 「まっててね、れいむ!あとはかべとやねをつくるだけだよ!!」 「ゆゆ~!まりさといっしょになって、ほんとうによかったよ!!」 今日の作業はここまでにして、二匹は木の根元の家に戻ります。しかし、頭の中は新しいお家のことで一杯でした。 れいむの頭の蔓には、小さな実がプツプツと出来始めていました。 次の日も、朝からまりさはお家作りに励みます。昨日作った石の壁の隙間に、小石や砂、枯れ草を詰めていきます。 今日はれいむもお手伝い。お家の外で泥と藁を噛み砕き、唾液を混ぜて吐き出しています。 ゆっくりの中身は甘い餡子。その唾液は水あめのような成分が含まれています。 この成分と泥を混ぜ合わせ、藁をつなぎに使うことで、泥は乾くと強固な壁となるのです。 「くっちゃくっちゃ…ゆぺっ!」 「れいむもおてつだいできるよ!くっちゃくっちゃ…」 「ゆぺっ!!」 その頃、まりさは石で出来たの隙間に藁や草を詰めていました。口を使って器用に石の隙間に押し込んでいきます。 「ゆっ!ゆっ!ここまできたらあとすこしだよ!ゆっくりがんばるよ!」 しばらくして、石の隙間は全て埋まりました。後は泥で固めていくだけです。ここでれいむの声が聞こえました。 「まりさ!いわれたとおりにまぜおわったよ!」 「ゆっ!もうできたんだね!あとはそれをかべにぬりぬりすればおわりだよ!」 「ほんとう!?じゃあはやくおわらせておうちにはいろうね!あかちゃんももうすぐうまれそうだし、はじめてのゆっくりはおうちのなかでさせてあげたいよ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 ふと、まりさの餡子の中を子供の頃の記憶がよぎります。 物知りなお母さんぱちゅりー、働き者のお父さんまりさがお家を作っていたときは、くっちゃくっちゃした泥を、藁や草で隙間を完全に塞いだ壁に塗っていました。それも一日ではなく、数日に分けてちょっとずつです。 確かお母さんぱちゅりーは、泥を少し塗って、乾いたらまた少し塗って、と言っていたような… 「ゆー、でもまりさはいそぐんだよ!あかちゃんがうまれるまえにおうちをつくりたいんだよ…」 まりさは誰とも無しに呟きます。そこに、れいむが入り口から顔を覗かせました。 「まりさ、ゆっくりしすぎだよ!あかちゃんもはやくおうちをみたがってるよ!」 みると、れいむの頭の蔓には目や口、リボンや帽子もしっかり出来た赤ちゃんゆっくりが実っています。 先端の一匹などは自分の力で動いていて、今にも蔓から離れることが出来そうです。地面に落ちて元気な産声を上げるときも近いでしょう。 そんな赤ちゃんを見て、まりさの懸念は吹き飛びました。 「ゆっくりりかいしたよ!まっててね、もうすぐできるからね!」 「うん、まりさがんばってね!」 そうと決まれば作業再開です。まりさは泥を口に含み、壁に吹き付けた後ほっぺですりすりしていきます。れいむは塗り込む泥が乾かないよう、口内で充分くっちゃくっちゃしたあとまりさに渡します。 内壁が終わったら今度は外壁です。 「おうちのかべには『れいむとまりさのおうち』ってかこうね!」 「きれいないしもかざりたいよ!きっとすごくゆっくりできるよ!」 「れいむのおかあさんといもうとたちをしょうたいしてあげたいよ!」 れいむはすっかりご機嫌です。そのせいか、赤ちゃんの小さな顔もとても嬉しそうです。それを見るだけでまりさの疲れは吹き飛ぶのでした。 ようやく、外壁が泥で埋め尽くされます。さあ、ここからが仕上げ。お家に屋根を取り付けるのです。 「ゆっしょ、ゆっしょ…」 まりさは持てるだけの枝や葉、藁を持って外壁を登ります。 「ゆっ!ゆっ!」 そして口を器用に使い、穴に木の枝を渡していきます。木の枝の両端は泥で外壁に埋め込みます。縦横十本も渡すと、しっかりと格子が出来ました。そこに葉っぱ、藁を被せたあと、ゆっくり泥を乗せていきます。一カ所に重みが集中しないよう、薄く、満遍なく。 その上にもう一度木の枝で格子を作り、さらに泥を被せ、葉っぱ、藁を乗せます。この葉っぱと藁はよく水を弾くので、屋根に最適なのです。 あたらしいお家も完成まで後一歩。大きな円柱型をした、泥の塊が出来上がりました。 まりさが屋根から下を見ると、れいむがどきどきしながら見守っています。それを見ながらまりさはゆっくりと屋根の上に乗っかりました。屋根が崩れてこないかのテストです。ゆっくりが乗った程度で崩れる屋根では、いずれ屋根が壊れて潰れてしまうでしょう。 「そろーり、そろーり…」 まりさはゆっくりと屋根の上を這います。れいむの見守る中、半分…残り少し…と距離を伸ばし…やがて、反対側の壁に足が着きました。 「ゆっ……ゆーーー!!!できたよ、れいむ!まりさたちのおうちだよ!!」 大喜びで壁を駆け下り、れいむの元に跳ね寄るまりさ。れいむは頭に赤ちゃんが居るので飛び跳ねたりして体で喜びを表現する事は出来ません。でも、その頬は感動の涙で光っています。 「ゆうぅ…ん!こんなすてきなおうちにすめるのはまりさのおかげだよ…!」 「なにいってるの!れいむのためだからがんばれたんだよ!」 「ま、まりさ…!ずうっとれいむとゆっくりしてねぇ…!」 れいむは頭の蔓をぶつけないよう、細心の注意を払ってお家に入りました。 一方まりさは古いお家に残った食べ物を全て新しいお家に運び込みます。れいむの作った苔のベッド、木の枝で作った椅子もです。 二匹の宝物、まりさがれいむにプレゼントした押し花や、二匹で見つけた綺麗に光る小石、赤ちゃんの為に作った綿の布団も持ち込みました。 全てを運び終えたときには、辺りは真っ暗になっていました。 「ゆゆ、まりさはばんごはんはすこしでいいよ。のこりはれいむがたべてね!」 「ゆっ!?だめだよ、ゆっくりするならまりさもいっしょだよ!?」 「そうじゃないよ、れいむがごはんをたべると、くきにえいようがいくんだよ!それはあかちゃんのさいしょのごはんになるんだよ!あかちゃんのためにたくさんごはんをたべてね!」 「ゆゆ!まりさすごい!ぱちゅりーみたいだよ!」 「ゆっへん!まりさのおかあさんぱちゅりーがおしえてくれたんだよ!」 こんな会話のあと、れいむは運んだ食料を食べ尽くしました。もちろん、赤ちゃんの為を思ってです。 「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪れいむのあかちゃんもよろこんでるよ!」 そんなれいむを見つめる内に、今日の疲れが出たのかまりさは眠ってしまいました。 「ゆゆゆ!まりさ!まりさおきて!」 「ゆ…ゆゆっ?」 悲鳴のような声でまりさは目を覚ましました。れいむの身に何かあったのでしょうか?いえ、この状況でれいむが大声を出すとしたら理由は一つしかありません。 「れいむ!うまれそうなの!?」 「そうだよ!ふたりのあかちゃんだよ!!」 見ると、子供達は全員体を振り子のように揺らし、蔓から離れようとしています。 「ゆっ!あかちゃんがんばってね!いっしょにゆっくりしようね!」 れいむが声をかけると、赤ちゃんのうち一匹が一際大きく体を揺らしました。その反動で体が蔓から離れ、地面に落ちます。 両親の見守る中、しばらくもがいたあと、赤ちゃんは自分の足で立ち上がり… 「ゆっくいしていってね!!」 舌足らずな産声を上げました。とても元気なれいむです。 「ゆうーっ!すごくゆっくりしたあかちゃんだよ…!」 「すごいよ!れいむそっくりのびじんになるよ!!」 感動の涙を流す二匹。それに連動するように、次々赤ちゃん達が蔓から離れ、 「ゆっくいしちぇいっちぇね!」 「ゆっきゅりー!」 「ゆゆーん!」 思い思いの産声を上げます。れいむが四匹、まりさが三匹のかわいい赤ちゃん達です。 「あかちゃんたち!れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ、おかあしゃんだ!」 「おかあしゃん、うんでくれてありがとうね!」 お母さんになったれいむとお父さんになったまりさは、赤ちゃん達と頬をすりすりします。頬擦りはゆっくり達の愛情表現。それを繰り返すことで、家族の絆を深めるのです。 「おかあしゃん、れーみゅおにゃかがすいたよ!」 「ゆみゅっ!まりしゃもおなかしゅいてきちゃよ!」 「「「ゆっくいごはんちょーだい!!」」」 ひとしきりの頬擦りが終わると、赤ちゃん達は空腹を訴えます。すると、丁度良くお母さんれいむの頭から蔓が抜け落ちました。 「それがあかちゃんたちのごはんだよ!ゆっくりたべてね!」 お父さんまりさが言うと、赤ちゃん達は蔓に群がり小さな口でかじりつきます。 「ゅー!とてもゆっくいしたごはんだにぇ!」 「うっみぇ、めっちゃうみぇ!」 「「「「「むーちゃむーちゃ、しあわしぇ~♪」」」」」 瞬く間に蔓は食べ尽くされました。みんなお腹一杯そうにしています…が、おや?赤ちゃんまりさ三匹は物足りないような顔でお父さんまりさに跳ね寄ります。 「おとうしゃん!まりしゃ、まだおなかいっぱいにならないよ…」 「もっとごはんたべさせてね!」 「おとうしゃん、おねがい!」 どうやら赤ちゃんまりさ達はお腹一杯にならなかったようです。お家の中の食べ物は昨日、お母さんれいむが全て食べてしまいました。 「ゆっ、わかったよ!おそとにくささんをとりにいくから、ゆっくりまっててね!れいむ、あかちゃんをちゃんとみててね!」 「わかったよ、まりさ!はやくかえってきてね!あかちゃんたちとたくさんおはなししようね!」 お父さんまりさはお家の入り口から飛び出しました。 赤ちゃん達にはなにを食べさせてあげよう?野いちごは赤ちゃんにはまだ酸っぱいかもしれません。でも、ただの草ではおいしさに欠けるというものです。 「そうだ!おはなをあつめるよ!あかちゃんはまだちいさいから、おはなのみつでもあまあま~♪だよ!こんないいことおもいつくなんて、やっぱりまりさはかしこいよ!だって、ぱちゅりーからうまれたんだもん!」 自分の思いつきに顔を緩めながら、お父さんまりさはお家の近くのお花を片っ端から摘み始めました。 一方、お家の中ではお母さんれいむが赤ちゃんたちにお歌を歌っています。入り口からお父さんまりさの姿が見えるたび、お母さんれいむと赤ちゃん達はお父さんまりさに声援を送ります。 しかし、お歌が好きな赤ちゃんれいむに比べて元気一杯な赤ちゃんまりさ達はお歌ではもの足りず、お父さんまりさの持ち込んだ綺麗な石や、お母さんれいむの作った椅子に興味津々。早くもお母さんれいむの側を離れ、お家の中を跳ね回っています。 「ゆゆっ?かべからくさしゃんがはえてりゅよ?」 一匹の赤ちゃんまりさが、泥の壁から一本、ぴょこんと出ている藁に気付きました。 この藁、お父さんまりさが石の隙間を埋めるために使ったものです。完全に泥に塗りこめていなかったのでしょう。 「しゅごい!おうちのなかに、くさしゃんがはえてりゅよ!」 「これならおしょとにいかにゃくても、ごはんがたべられりゅね!」 赤ちゃんまりさ達は大はしゃぎ。さっそく一匹が飛びつきます。しかしその草は壁から抜けず、噛みついた赤ちゃんまりさは壁から宙ぶらりん状態になりました。口だけで体重を支えている状態です。 「おねえちゃんしゅごい!おしょらをとんでりゅみたい!」 「はやくくさしゃんをとってね!まりしゃたちでたべようね!」 お姉さんの赤ちゃんまりさも一生懸命体を振って、なんとか壁から草を引き抜こうとします。少しずつ動いてはいますが、なかなか引っこ抜けません。 「まりしゃたちもてちゅだうよ!」 「ゆゆー!」 見かねた妹まりさたちも抜けかけの藁に飛びつきます。一匹より三匹で引っ張れば抜けると思ったのです。 二匹分の重量が加わった瞬間、赤ちゃんまりさ達の体が大きく動きました。確かに藁は抜けました。しかし、一緒に泥の壁まで剥がれ落ちてきたのです。 お父さんまりさは自分のお母さんのやり方と違い、一度に沢山の泥を塗りつけました。その結果、壁の表面は乾いても内側はゆっくりの唾液や泥をこねるのに使った川の水でじっとり湿っていたのです。 もしもお父さんまりさがぱちゅりーと同じように泥を乾かしながら作業をしていれば、ここまで壁が大破することは無かったかもしれません。 湿った泥は互いにくっつきあい、壁から剥がれ落ちる面積を広げてしまいました。 「ゆみ゛ゅ゛っ゛!」 「びゅげぇ゛っ!」 「ぎゅ゛びっ!」 背中から床に倒れ込んだ赤ちゃんまりさ三姉妹。その上からは剥がれ落ちた壁が落下してきます。まだ体の柔らかい赤ちゃんがその衝撃に耐えられるはずもなく、小さなまりさ達は生まれてわずか十数分で潰れて死んでしまいました。 さらにその衝撃で、剥き出しになった石が崩れ落ちます。一カ所が崩れた途端、付近の支えを失った石の重量は脆い壁にかかります。その衝撃で再び内壁が剥げ落ち、さらに壁の石が崩れ、崩壊を広げます。 天井の縁を固定していた部分が壊れた途端、泥でできた重さたっぷりの天井が抜け、れいむ達の頭上に降りかかりました。赤ちゃんまりさが壁を壊してしまってから、おそらく三秒もかからなかったでしょう。 「これだけあつめればあかちゃんもよろこぶよ!」 一方こちらはお父さんまりさ。お口の中にはお花が一杯です。このお花はそのまま食べることもできますが、茎を千切ると甘い蜜が溢れてくるのです。お父さんまりさの頭の中は、愛しい伴侶とかわいい赤ちゃんに囲まれてゆっくりすることで一杯でした。 お家の方を向くと、入り口から赤ちゃんまりさ達が壁にぶら下がって遊んでいるのが見えます。 が、次の瞬間。 「ゆ?…ゆ゛あああああぁあ!!!?」 お父さんまりさは絶叫しました。せっかく作った自慢のお家が瓦礫の山に変わってしまいました。しかもその中には大切な奥さんと赤ちゃん達がいるのです。 お父さんまりさはお花を放り出し、急いでお家だったものに駆け寄りました。 「いやああああああ!!まりさのおうちがあああああ!!!れいむがああああ!!!」 お父さんまりさ、本日二度目の絶叫です。それもそのはず、大切な奥さんは瓦礫に埋もれて今にも潰れてしまいそうなのですから。お父さんまりさは必死にお母さんれいむに話しかけます。 「だいじょうぶれいむ!?いまたすけてあげるからね!」 「ゆ゛っ…まってまりさ…さきにあかちゃんをたすけてあげてね…!」 言われてまりさは赤ちゃんのことを思いだし、急いで瓦礫の中をのぞき込みます。 瓦礫の奥底で三つ並んだ黒帽子、それにこびりついた餡子と皮…赤ちゃんまりさは全滅でしょう。 瓦礫の隙間には二匹の赤ちゃんれいむが挟まれています。その隙間も一センチ程しかなく、赤ちゃんたちはピクリともしません。 もう一匹の赤ちゃんれいむは後頭部から顔面にかけて、木の枝が貫通していました。どう見ても手遅れです。 お父さんまりさが三度目の悲鳴を上げかけたそのとき、微かなうめき声が聞こえました。見ると、まだ小さな赤ちゃんれいむが瓦礫の隙間でがたがた震えています。 奇跡的に瓦礫に押しつぶされずにすんだのでしょうか、けれど頭上の壁の残骸は今にも崩れそうです。 「ゆゆっ!!あかちゃん、そこはあぶないからはやくおとうさんのところにきてね!」 急いで呼びかけるお父さんまりさ。しかし、赤ちゃんは白目を剥いたままガクガクと震えるばかり。それは恐怖から来る震えではなく、瀕死の痙攣でした。 「もっちょ…ゆっくい…ちたかっ…」 赤ちゃんれいむは断末魔を残し、うつ伏せに倒れ込みます。石にぶつかったのでしょうか、その後頭部は半分近くが失われていました。今度こそお父さんまりさの三度目の絶叫が響きました。 「まりさ、どうしたの!?はやくあかちゃんをたすけてね!」 瓦礫の下から声を上げるお母さんれいむ。彼女は瓦礫に押さえつけられ、周りを見ることができません。赤ちゃん達の惨状が目に入らないのです。 しかし、隠すわけにもいきません。お父さんまりさは苦い顔をしながら告げました。 「れいむ、あかちゃんはたすからなかったよ」 「ゆ゛っ!?まりさ、わらえないじょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ!」 「ほんとうだよ!ぜんぶしんじゃったよ、ゆっくりりかいしてね!」 「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!?」 お母さんれいむにとってはお腹を(頭を?)痛めて産んだ赤ちゃんです。お父さんまりさと違って死んだものは死んだと割り切ることなどできません。 逆にお父さんまりさは死んだ赤ちゃん達にあっさりと見切りをつけていました。ゆっくりは死に易い生き物。事故で命を落とすことは日常茶飯事です。 ならばこそ、死んだ赤ちゃん達の分までゆっくりしなくてはと考えました。 「しんだものはしかたないよ…とにかくれいむのことをたすけるから、ゆっくりまっててね!」 「どに゛がぐじゃ゛な゛いでしょお゛お゛ぉ゛お!!?」 どうやらお母さんれいむはお父さんまりさの言い方が気に障ったようです。 お父さんまりさもお父さんまりさで、死んでしまった赤ちゃんにこだわり続けるお母さんれいむに少しむっとしました。 「このままだとれいむまでしんじゃうよ!いまはれいむをたすけるのがせんけつだよ!」 「だがら゛さぎに゛あ゛がぢゃん゛をだずげでっでい゛っでる゛でしょ!!?ばかな゛の゛!?じぬ゛の!!?」 「だから!あかちゃんはみんなしんじゃったよ!ゆっくりりかいしてね!」 「うぞだあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」 何を言ってもヒステリックに叫び続けるお母さんれいむ。次第にお父さんまりさのイライラも募ります。 「だいたい、れいむがちゃんとあかちゃんをみてなかったからだよ!まりさはれいむに、あかちゃんをみててね!っていったのに!」 「なにいってるの!?そもそも、まりさがこんなぼろいおうちをつくったせいだよ!!あかちゃんがひっぱっただけでこわれるおうちなんてきいたことないよ!!」 「ゆっ!!?ちがうよ、れいむがまりさをいそがせたからだよ!!もっとじかんをかければがんじょうないえになったんだよ!!」 「れいむのせいにしないでね、このくず!!!こんなごみみたいなおうちならつくらないほうがましだよ!!」 「ゆゆっ!!?」 だんだんお母さんれいむの口調がヒートアップしてきました。どうやらお母さんれいむ、ゲスの素質があったようです。 「まりさのおかあさんのほうほうなんてためさなければよかったよ!ふつうにつちをほればよかったよ!!どうせまりさのおやも、ごみみたいなおうちをつくってごみみたいにつぶれたんでしょ!!」 「ゆ゛っ!!?ちがうよ、まりさのおとうさんとおかあさんは、ふらんにたちむかっていったんだよ!」 「うそだよ!まりさはおやがごみみたいにつぶれたのがはずかしいからうそをついてるんだよ!どうせくずみたいなおやなんでしょ、まりさをみてればわかるよ!!」 「ばかなこといわないでね!さすがのまりさもおこるよ!!」 「ごみみたいなおやからうまれたくずまりさがなにえらそうにしてるの!?くずはさっさとれいむをたすけたらじさつして、くずしかうめないごみおやにあいにいけばいいんだよ!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だま゛れ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 お父さんまりさの両親がふらんに殺されたというのは本当のことでした。まりさが子供の頃、体付きのふらん三匹が一家を襲ったのです。 まりさのお父さんのまりさは怖じ気付くことなく、勇敢にふらんに立ち向かいました。 お母さんのぱちゅりーは知略を駆使してまりさを逃がし、自らは囮となりました。 まりさは両親のお陰で体付きのふらん、しかも三匹から逃げおおせたのです。お父さんとお母さん、姉妹達は死んでしまいましたが、まりさはそんな両親を尊敬していました。その両親が目の前のゲスれいむに貶められている…お父さんまりさの視界が真っ赤に染まりました。 「ゆっくりしないでしねええええええ!!!!!!」 手近にあった、屋根の柱に使った枝。お父さんまりさはそれをくわえ、瓦礫の隙間からお母さんれいむの体に突き刺します。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ま゛り゛ざの゛ゆ゛っぐり゛ごろ゛しい゛い゛い゛!!!」 「しね!!しね!!まりさのおとうさんとおかあさんをばかにするれいむはいますぐしねぇぇえ!!!」 「だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!たずげでえ゛え゛え゛!!くずま゛り゛ざに゛ごろ゛ざれ゛る゛う゛う゛う゛!!!」 お父さんまりさの枝が、お母さんれいむの体を何回も突き刺していきます。その度にお母さんれいむの悲鳴があがりますが、それもだんだん小さくなり、やがてピクリとも動かなくなりました。 「きゃははははははははは!」 平原に高笑いが響きました。声を上げたのはお父さんまりさ。以前のお家が壊れた近くで新しく石を積み直しているようです。 「れーむもあかちゃんも、みーんながゆっくりできるおうちをつくるよ!きゃははははははハははハハ!!」 とても楽しそうに笑いながら、石を積み上げていくお父さんまりさ。その傍らには大事な家族が勢ぞろいしています。 なくなった両目の代わりに綺麗な石をはめ込んでいるお母さんれいむ。 後頭部をごっそり失った赤ちゃんれいむ。 前から後ろに木の枝が貫通している赤ちゃんれいむ。 ぺたんこになっている二匹の赤ちゃんれいむ。 皮の切れ端だけの赤ちゃんまりさ達。 風が吹くたびにゆらゆらと揺れ、みんながお家の完成を心待ちにしています。 「おっけー、まりサにまカせて!!きャはははははハハははは!!!」 尖った石で体が傷つこうとも、そのせいで致死量に近い餡子が流れ出そうとも、お父さんまりさは勢いを緩めません。 ひょっとしたら、そのことにも気づいていないのかもしれません。 お父さんまりさは餡子を失い過ぎて命を落とすまで、石を積み上げ続けました。 /**** 子供の頃は、蟻の巣を水攻めとか爆竹で爆破とか殺虫剤攻めとかしたもんです。 ゆっくりの巣でやったらどうなるんだろう… by 町長 /****今までに書いたもの fuku2120 電車.txt fuku2152 大岡裁き.txt fuku2447 ゆっくりセラピー.txt fuku2539 頭.txt このSSに感想を付ける
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「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「たべちゃうだってさ」 「おおこわいこわい」 魔法の森のゆっくり達は襲い掛かるゆっくりれみりゃを見てゆっくり構えつつも即座に逃走に移った。 森を熟知しているゆっくり達はれみりゃが手を伸ばすよりはるかに前に散り散りになりれみりゃの視界から消えた。 「うー?う゛ー!う゛ー!ざぐやー!おながずいだー!」 相当おなかがすいていたのか、ごはんにありつけずゆっくりれみりゃは地べたに座り込んで泣き出した。 その汚らしい声に木に止まっている森の鳥達が眉根をひそめて囀るのをやめた。 このゆっくりれみりゃ、ある人間の女の子に飼われていたのだが大きくなった上にわがままで、親に言われて泣く泣く捨ててしまうことになったのだ。 父親が戻ってこれないようれみりゃが寝ている間に魔法の森に入って木の洞に入れておいたのである。 洞の中に朝日がさして目を開けたとき、誰も居ないことで最初はさびしくてずっと森の中で泣いていたが そこはゆっくりブレイン、すぐに飼い主のことなど忘れおいしそうな匂いのするゆっくりを見つけると本能なのかすぐにゆっくりを狩り始めた。 最初のころは油断したゆっくりを何匹か捕まえることが出来た。 しかしれみりゃが居ることがゆっくりネットワークによって広まるとすぐに警戒され、ゆっくりを発見するところまではいけるのだが 捕まえようとするとすぐに逃げられてしまい全く狩りは成功しなかった。 そんな状況が二日ほど続きれみりゃはもはやふらふらでもうザグヤザグヤと泣き喚くしかなかった。 ちなみにさくやというのは前の飼い主の女の子のことである。 その子はさくやという名前ではないのだが何故かれみりゃは飼い主の女の子のことをそう呼んでいた。 「うー!ざぐやー!うあー!うあー!だれでもいいからごはんー!ごはん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ー!!」 「ゆっくりでてきましょうか?」 そんなれみりゃの前に森の木々の間からぴょこん、とゆっくりゆかりんが飛び出してくる。 「ほらゆっくりでてきました」 「う?うー!ぎゃおーたーべちゃうぞー!」 ゆっくりゆかりんが目の前に出てくるとすぐに噛み付こうと諸手をあげて突っ込んでくるれみりゃだったが あっさりとゆっくりゆかりんによけられて顔面から地面に思い切り突っ込んだ。 「う、う゛ー!どおじでみ゛んな゛れ゛み゛り゛ゃにだべら゛れ゛でぐでだいどぉー! お゛な゛がずいだー!ざぐやー!ざぐやー!!」 案の定泣き出したれみりゃを見てゆかりんはあきれながら言った。 「ゆー…れみりゃにたりないのはゆっくり人のはなしをきくことかしら ごはんにありつくための」 「うー?ごはん?うー♪ごはんちょーだいーごはんー!」 現金なものでれみりゃはごはんと聞くとすぐにごはんをくれると勘違いして河馬の様に大きく口を開いて食べ物を貰うための体勢を整えた。 「だからゆっくりゆかりんのはなしをきいてね」 ゆっくりゆかりんは溜息をつくと嗜める様にれみりゃに言った。 「ゆかりんがごはんを集めるのをてつだってあげるよ そしたられみりゃはおなかいっぱい食べられるようになってゆっくり出来るよ そのかわりにゆかりんが冬を越すためのたべものをいっしょに集めてほしいの」 「うー♪れみりゃたべものいっぱいあつめるー!だからごはんごはんごはんー!うー!」 とにかくご飯にありつきたいれみりゃは躊躇せずにいい笑顔で即答した。 「ゆっ、れいむゆっゆっれいむぅ…!」 「ゆっ、ゆっまりさ!まりさぁ!」 「ゆゆぅっ、すっきりするぅ…!すっきりしちゃうぅ…!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 『ゆんほぉおおお!?』 粘餡を出しながら体をこすりつけ合わせている、要するに交尾真っ最中のゆっくり二匹を発見し ゆっくり近づいて茂みから飛び出したゆっくりれみりゃ。 「ゆ!すぐににげないとゆっくりできなくなるよ!」 名残惜しみながらもすぐさま体を離すゆっくり二匹。 その頬からは粘着質な糸が引いていた。 「ゆー…まりさたちにたりないのはの少女臭かしら あさましいしょうどうを抑えるための」 ゆかりんはれみりゃに抱えられながらそう言い放つと地を這うれいむとまりさに口から何かを吐いてかけた。 「ゆぐぅうう!?くさい!くさいよおおおおお!?」 「ゆ!ひどいよ!れみりゃもゆかりんもゆっくりしね!!」 納豆を頭にかけられたゆっくり二匹は捨て台詞を吐くと即座に用意していた逃走ルートを通って逃げて行った。 「うー!ま゛っでぇー!う゛ー!」 追いかけようとして思い切り転んでしまうれみりゃを尻目に二匹は後で落ち合って続きをしようと目配せをした。 「ゆー…臭いよ…れいむ…」 苦もなくれみりゃとゆかりんの魔の手から逃げ切ったまりさはゆかりんの吐いた納豆の臭さに辟易していた。 「ゆっくりけんじゃなんていってゆかりんもぜんぜんたいしたことなかったよ! あんなばかはゆっくりしねばいいのに」 ゆかりんに対して文句の一つも言わないと収まりきらない気分だった。 ああこんなゆっくり出来ない気分の時は早くれいむと落ち合って体を洗ってさっきの続きをしたい。 そのことを考えると体がぬとっとしてくるまりさであった。 「ま゛り゛さ゛にげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛!?」 突如後ろから聞こえてくる声にその忠告を無視して思わずまりさは後ろを振り向いた。 「うー!ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「れいむうううううううう!!!!」 まりさの目の前に居たのはゆかりんとれいむを両腕に抱えるれみりゃだった。 れいむの頭にリボンが外れかけて変わりに黒っぽいものが見える。 あれはなんだろうか、あの黒いものは。 「どうじでれ゛い゛む゛のあ゛んごがああああああ!!!」 「はいゆっくりでてきました」 恐怖に駆られ逃げ出そうとするまりさの前にれみりゃの上でから飛び降りたゆかりんが立ちふさがった。 「うーたーべちゃうぞー!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ま゛りざああああああああああああ!!!」 ゆかりんを避けるか、それとも弾き飛ばすかを躊躇した瞬間、まりさの頭をれみりゃの手が掴んでいた。 こうなればもうまりさに逃げる手段は無い。 「どうじでえ゛え゛え゛え゛!どうじでみづがっだの゛おおお! ちゃんとにげだの゛に゛い゛いいいいいい!!」 絶望で包み込まれたまりさが考えたことは何故自分の逃げた行方がれみりゃにわかったのかということだった。 「まりさの少女臭をゆっくり追って来たよ!」 「うー♪くちゃいくちゃい!」 「臭くないよ!少女臭だよ!」 そう、れみりゃとゆかりんはまりさ達についた納豆の臭いを追って来たのだ。 なんということだ、ゆっくり歩かずにすぐにでも川に向かって体を洗うべきだった、とまりさは嘆いた。 「うああああああああああああ!!!! じにだくな゛い!も゛っどゆっぐりじだいいいいいいいいい!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!」 「だべだいでええええええええええええ!!!」 「そんなにゆっくりしたいなら、いくらでもゆっくりさせてあげるわよ」 「!?」 「ほんとに!?」 生気を失っていた二匹のゆっくりの目に光が戻った。 「うー?だめ~、これはれみりゃのごはんー!」 「れみりゃもおなかいっぱいになれるはなしよ」 「う~?おなかいっぱいー!ごはんー!ごはんー!」 「ただしゆかりんの言うことを聞いたらだよ そしたらゆっくりさせてあげるよ」 片目を閉じて二匹を横目に言うゆかりん。 「聞きます!聞きますうううううううう!!!」 泣きながらまりさはゆかりんにすがりついた。 しかしれいむは警戒を解こうとはしなかった。 既に頭を齧られているので当然といえば当然だろう。 そんな二匹に対してゆかりんは言った。 「れいむかまりさの家族の居るおうちをおしえてくれたらゆっくりさせてあげるよ」 ニヤリ、とゆかりんの口元がいじわるそうに歪んだ。 「!ぜったいにおしえたりしないよ! れいむたちをたべるならゆっくりしてないでとっととたべてね!」 やはりそんなことだろうと思った、れいむは胸中でそう自分の命は諦め代わりに家族を守るために硬い決心をした。 絶対に家族を売ったりするものか、その想いはまりさも同じである。 「こ゛っち゛です゛!ごっぢに゛れ゛い゛む゛だぢのおうぢがありまずううううう!!!」 「ま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 と思っているのはれいむだけだったようだ。 まりさは顔中から餡子汁を流してニヘラニヘラと卑屈な笑いを浮かべながらゆかりんとれみりゃを案内し始めた。 ゆかりんはそれをみてケラケラと笑いながらついていった。 「まりさだよ!ゆっくりあけてね!」 「ゆ、いまあけるよ!ゆっくりしていってね!」 巣の中で冬の支度をしていたお母さんれいむは娘のれいむの友達のまりさが娘と共にゆっくり帰ってきたようなのですぐに家の扉を開けた。 「お゛があ゛ざんあげぢゃだめ゛え゛え゛え゛!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!!」 「ぎゃあああああああああ!?」 扉を開けるとそこにあったのは娘とその友達の笑顔ではなく小さな、それでもゆっくりにとってはとても大きな手。 その手はお母さんゆっくりのおでこに5本の指を突き刺すとまるでみかんの皮でもはがすかの様に顔面の皮を引き剥がした。 黒い餡子にぽっかりと開いた空洞から断末魔が響き渡った。 「うー♪うま♪うま♪」 「いやー!」 「どうじでごんなごどずるのま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「はなぢでええええええええええええええ!!!!」 次々と食べられていくれいむの家族達。 「ここはゆかりんのおうちにするから汚さないでね!美しくね!」 ぼろぼろと食べこぼしながら巣の中を漁るれみりゃのおしりにゆかりんが噛み付いて抗議していた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お゛があ゛ざんお゛があ゛ざんお゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 「ゆー、騒がしくて美しくないからそのれいむももう食べていいよ」 「うー?うあー♪たーべちゃうぞー!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 ゆかりんからの許可が出て早速さっき付けた傷の辺りから餡子を吸い出すれみりゃ。 れいむは一瞬で全ての餡子を吸い出されて湿った皮だけになった。 「うー、あま♪あま♪」 まるでその皮はデスマスクのようで、その表情は恐怖と悲しみと怒りの全てが入り混じった恐ろしい表情だった。 人間を使ってもこうも見事なデスマスクはそう簡単に作れないであろう。 「これいあない♪ポイっ、するの♪ポイっ♪」 しかして残念なことに餡子を吸い出した後の皮にれみりゃは全く興味は無くその辺に放り出して その皮はゆっくり、鳥と虫の滋養となった。 「これでまりさはゆっくりできるよ!」 その惨状を後ろから見ていたまりさは全てが終わったと思い歓声を上げた。 その笑顔はとても清清しいもので、それを見て思わずゆかりんも微笑み返してこういった。 「あのまりさももう用が無いから食べていいよ」 まりさの笑顔が凍りついた。 「ど、どどどどどどどどどどどどど」 まりさはカタカタと震えだした。 交尾の時でもこの半分も震えないだろう。 清清しい笑顔は引き攣った笑いとなってまりさの顔にへばりついた。 思い切り泣きわめきたいのに涙だけが一筋こぼれても引き攣り笑いしか出来なかった。 「どっどっどどどおしてややややくそっそそくしたたたたたた」 「ゆー、たしかまりさとはこれが終わったらいくらでもゆっくりさせてあげるわよってやくそくしてたわね」 「!?そそそうだよ!わすれちゃだめだよ!ゆっくりできないところだったよ!」 ただ単に約束を忘れていただけなのだ、そう知って安心したまりさは引き攣り笑いをやめて再びあの清清しい笑顔をしようとした。 「お友達のれいむのところで、永遠にゆっくりしていってね」 「たーべちゃうぞー♪」 しかしそれよりも早く現実とれみりゃの爪がまりさを引き裂いた。 「うー♪おなかいっぱい♪うーうーうあっうあっ♪」 そんな風にゆかりんとれみりゃが協力して狩りを続けて一週間ほどが経った。 れみりゃもゆかりんの指導の下で大分野生の生活と魔法の森にも慣れて、頑張れば一人でも餌を取れるようになっていた。 特に姿が見え無いときは饅頭の臭いを辿ってゆっくりを捕まえればいいとゆかりんに教わったことでれみりゃの狩りの力は大きく成長した。 まあ野生のれみりゃ種やフラン種は本能で簡単にやってのけてしまうことではあるのだが。 「そろそろゆっくりしてないでゆかりんのごはん集めを手伝ってね!」 れみりゃも一人前になってきたのでそろそろ当初の予定通り自分の冬越え用の食料集めを手伝ってもらってもいいだろうと ここ二日ほどゆかりんはしきりにそのことをれみりゃに訴えかけていた。 「…うー」 「拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!」 しかしれみりゃはせっかく気分良く踊っていたところで怒鳴られて邪魔されて面白くない。 ここ二日間ほどはずっとそうだった。 れみりゃはそのゆっくりブレインで考えた。 もう狩りの仕方も覚えたしれみりゃがゆっくりするのを邪魔するこの納豆は要らないのではないか。 そうだ、もうこれは要らない。 「うー♪こえいらない!ポイっするの!」 「ズギマ゛!?」 思い立てばその行動はすばやかった、全くゆっくりしていない。 ゆかりんは森の木に向かって投げつけられた。 「ゆ…ゆぐほっ!?」 ゆかりんはずるりと地面に落ちて、口から納豆を垂らして咳き込んだ。 「うー♪くちゃいくちゃい♪こえいらなーい♪ぽいっ♪するの、ぽいっ♪」 れみりゃは今までの鬱憤を晴らすためにもう何度も投げて壊れるまで遊んでやろうとゆかりんの方へと歩き出した。 「鼻につくわ…そのゆっくりれみりゃ特有の上から目線…!」 ゆっくりゆかりんの目付きがそれまでのゆっくりした目付きから鋭い、肉食獣のような目付きに変わった。 しかしれみりゃはそれに気づかずに屈んで手を伸ばした。 ゆかりんは負傷しているとは思えないほどの速さでその手の上に跳ね乗るとそこからさらに跳び、れみりゃの鼻に噛み付いた。 「!?う゛あ゛ー!?あ゛ぐや゛ー!!!あ゛ぐや゛ー!!!」 予期せぬ反撃にしりもちをついて手をぶんぶんと振り回すしか出来ないれみりゃの鼻の中にゆかりんはプッと何かを吹き込んだ。 「!?!?!?!?!?!?!?」 れみりゃが目を白黒させる。 「う゛あ゛あ゛ああああああああああ!?ぐぢゃ゛い゛!ぐぢゃ゛い゛い゛い゛い゛!!!!!??????」 そう、ゆかりんはれみりゃの鼻の中に納豆を吹き込んで居たのだ。 「まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ」 ゆかりんはれみりゃの鼻を離して地面に降りると、冷めた表情でれみりゃに問いかけた。 「ゆっくりでていきましょうか?」 「う゛あ゛あ゛あああぐぢゃ゛い゛の゛おおお!!!あ゛っぢい゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ほらゆっくりでていきました」 そういうと、ゆっくりゆかりんはどこからともなく現れたときのようにいつのまにか木々の間へと消えていった。 「う゛あ゛ー!!!ざぐや゛!ざぐや゛あ゛あああ゛ああ゛ああ゛あ゛!!!!」 「うー、うー…」 それから数日が経ち、何とか臭いになれて動けるようになったれみりゃは生きるために餌のゆっくりを探して何日もさまよい続けていた。 しかしゆかりんの下で覚えた狩りの方法は全くその効果を発揮しなかった。 れみりゃはあの鼻納豆で嗅覚を完全に破壊されていたのだ。 再生力の強いれみりゃ種でもここまで鼻の機能を壊されてしまえば臭いを追って獲物を捕まえることも出来ない。 目視できる場所からでは空腹で力の出ないれみりゃでは捕まえる前に逃げられてしまう。 れみりゃは着々と衰弱していた。 「うー…おなかすいた…さくや…さくやー………」 恐らくれみりゃが獲物にありつくことは二度とないだろう。 「さくや、さくや、さくや…」 遂に森の中でへたり込み、何度も飼い主の名を呼ぶ。 困ったときはいつもさくやが助けに来てくれた。 そのまま一歩も動かずれみりゃはさくやとの思い出を反芻し続けた。 「これかってもいいの?ありがとうおかあさん! よろしくね、わたしはあなたのかいぬしの○○○よ」 初めてさくやにあった日、まだ顔だけだったれみりゃにさくやは奮発してプリンをプレゼントしてくれた。 「もー!れみりゃー!散らかしたら駄目でしょ!」 れみりゃがおもちゃを散らかすとさくやはぷんぷんと怒りながらも代わりに片付けてくれた。 「れみりゃ、もうちょっとまわりのことを考えて迷惑をかけないでね お父さんとお母さんもちょっとれみりゃのわがままに迷惑してるんだから」 さくやは本当に心配そうにれみりゃにそう言った。 れみりゃにはよく意味がわからなかった。 「もうみんなに迷惑かけないって約束して、ね れみりゃだってがんばればちゃんと私との約束守れるよね」 さくやはれみりゃに不安で不安で仕方ないのを隠しながらきっと出来ると言った。 れみりゃは横を向いておやつを食べながらうんと返事をした。 「もう庇い切れないの!お願いだからもうお父さんとお母さんに迷惑かけるようなことしないで! 約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!」 さくやは泣きながら、縋るようにれみりゃに頼み込んだ。 れみりゃはさくやに笑顔で返事をしてあげた。 その日の夕方ごろ、おかしはないかと食べ物を入れてある棚の中をぐちゃぐちゃにして結局おかしは見つからずふてくされてベッドで眠った。 朝起きると森の中に居た。 「うー、さくや、さくや…」 段々と、れみりゃにもわかり始めていた。 『拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!』 『まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ』 『約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!』 「うー…ごべんな゛ざい゛…やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざい…うー、うー…!」 ようやく、れみりゃにも何が悪かったのかがわかった。 「ざぐや゛ごべんな゛ざい゛…!やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…! う゛ー!ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛、う゛ー!う゛ー!」 れみりゃは涙ながらに今までの自分の行いで裏切り、傷つけてきた人たちのことを想い心から謝った。 「やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…!ざぐや゛!ごべんあざい!ごべんあ゛ざいいい!ざぐや゛!ざぐや゛ぁ!」 飼い主の女の子がこの言葉を聞いたならばどれほど喜んでれみりゃを家まで連れ帰ってくれるだろう。 だがこの心からの謝罪がその子に届くことは無かった。 木々の枝葉の間から、鳥達が何も言わずにれみりゃが力尽きるのを見下ろしていた。 このSSに感想を付ける
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注意俺設定 って書いてあるssが多いけど俺設定じゃない虐ssってあるんだろうか? 文章下手だよー、見にくいよ、誤字脱字は許してねー。 主観がころころ変わります。 ネタかぶり乙・・・すいません。 長編です。5,6分割してゆっくり仕上げたいと思っています。 それではどうぞ。 その群れは全滅の危機に瀕していた。 すでに木枯らしが吹き始め、木々の色は赤色から茶色へまるで老けるかのように変わっていった。 普段ならそろそろ越冬の準備を終え、巣を塞ぐ作業に取り掛からなくてはならない時期だ。 しかし、この群れでは未だに越冬できるまでの餌すら集まっていない状況である。 「ゆ、このままじゃ冬を越せないよ。」 そういうのはこの群れのリーダーを務めているまりさである。 この群れは現在100匹程度のゆっくりがいる。 ドスはいないが今までは近くに外敵が存在しなかったのでそれなりに長い期間ここに巣を構えていた。 しかし最近では幾分か状況が違ってきた。 まず、今まで群れの中心の役割を果たしていたゆっくり達が突然いなくなってしまったこと。 二つ目に急に人間がゆっくりを狩り始めたこと。 三つ目にすっきりが重なって人手(ゆっくり手?)がいる時機に動けるゆっくりが非常に少なくなったこと。 四つ目に急激に群れの人口が増えたことによる周辺の餌の乱獲である。 様々な状況が重なり今の状況になっていた。 このリーダーのまりさは前リーダーが失踪してこの群れの崩壊を感じ取っていた。 そして、この群れをまとめる為にリーダーを買って出た リーダーを急に失くした群れはすぐに好き勝手に自分の欲望を果たそうとし、 その結果蓄えを全て使い果たし、群れの数もすぐに倍までに膨れ上がった。 このまりさがリーダーを名乗り出なければ、この群れはすでに崩壊していただろう。 しかし、このまりさはリーダーになったはいいもののなぜ群れが越冬出来なくなるほどに追い詰められているかが理解できなかった。 今まで道理に餌を集めてなぜ餌が集まらないのだろう? 「なんでえさがあつまらないんだろ?」 と親友のぱちゅりーに疑問を投げかける。 このぱちゅりーは子供からの幼馴染的な存在であり、その博識さにまりさは一目置いており参謀役を頼んでいる。 「むきゅぅ、なぜかしら・・・まえよりみんなたくさんえさをとっているはずなのに・・・。」 「このげんいんはまえのおさのせいなんだぜ!まりさたちをこんなにくるしめるなんてさいていのりーだーだぜ!」 「そうだねー。ゆっくりできないおさだったね。わかるよー。」 今この場には群れの中心のゆっくりが5匹程集まり、今後の行動方針を話し合っていた。 といっても解決方法どころか問題点すら分からないようで、いつものことのように前のリーダーの 性で餌があつまらないという責任の押し付けに話題は変わっていた。 ちなみに前長を含む幹部達は非常に優秀なゆっくりであった。・・・あくまでゆっくりにしてはだが。 越冬も幾度か経験し、貯蓄の概念も持ち始め、冬場は人手が必要なので普段は狩に出ない母ゆっくり にも狩にでるように促したりもしていた。(この指示が結果として冬場の人口爆発を防いでいたのだが。) その貯蓄を全て無為に消費し、越冬のために餌を貯蓄しないでいるのは間違いなくこの若い幹部の責任である。 とはいえ、前長の失踪は唐突であり通常行われるはずの知恵の継承がされていなかった。 若い将来の長の候補ゆっくりは現職の長の元で雑用などをこなし、その業務について学んでいく。 それらなしにいきなり若い幹部候補は幹部になってしまったので、今まで長年培ってきた 知識が全て失われてしまった。 しかし、原因は分からぬがこのままでは冬を越せないことは現在の貯蓄量から確かであった。 「ゆっへっへっへ、おこまりのようだぜ。」 暗くなった場に場違いな、野蛮さをにじませた声が響く。 幹部達が声のする方向へ目をやると、そこに一人のまりさがいた。 「ゆゆ、まりさがなんのようなの?」 長のまりさ怪訝な表情をそのまりさに向けた。 このまりさは群れの中には必ず出てくる外れ者 所謂アウトローを気取って働きもしない怠け者(と幹部達は思っていている)である。 普段はこんなまじめな場どころか群れ全体の集会(幹部の決定などを発表する)にもでてこない。 しかし、群れの若いゆっくりには非常に人気が有り幹部達はこのまりさに良い感情を持っていなかった。 「えさがふゆをこせるほどあつまってないんだぜ。このままじゃまずいんだぜ。」 「ゆゆ!!・・・なんでそのことを。」 「そんなのすぐわかるんだぜ。そこでていあんがあるんだぜ。」 「ゆゆ・・・ていあんってなに?」 「ちょっとまえにまりさがたびにいったときのことをおぼえてるか?だぜ」 「ゆ、おぼえてるよ。あのときはもうぜんいんゆっくりできなくなってるかとおもったよ」 このまりさは東の方角に仲間(ここで言う仲間とはまりさの悪い友達に当たるのだが) と一緒に2週間ほどの旅に出かけていた。 2週間はゆっくりたちにとっては非常に長く、群れの皆はもうまりさは死んだと思っていた。 しかしまりさは昨日生きて帰ってきた。ただし一緒に出発した仲間は一緒ではなかった。 「そのたびでまりさはすごいゆっくりぷれいすをみつけたぜ!」 このまりさが言うにはこの群れから7日ほど歩いたところににおいしいやさいが たくさん生えている、恐らくこの群れ程度ならかなりの長い期間養える 最高のゆっくりプレイスがあるということだ。 「おやさいが・・・たくさん・・・。」 以前この長のまりさはおやさいを一口だけ食べたことがあった。 それはいつも食べている草などよりも甘くとてもおいしかったことを覚えている。 思わずそこにいる幹部達は全員そのときの味を思い出してよだれをたらしてしまった。 しかし、後にも先にも野菜を食べたのはそれきりであり、それがたくさんあるとはにわかには信じがたかった。 「わからないよーそれはほんとかなーわからないよー。」 「そうだね、しんじられないよ。それにそこまでいったならなんでおやさいをもってこなかったの?」 長のまりさの言うことは最もで、 その発言は言うならば海賊が一面の金銀財宝をこの目で見たと一般人に吹聴するようなものであった。 「ゆ、やまほどあったからなかまたちにおやさいをはこばせてまりさだけさきにかえってきたんだぜ。 たくさんのおやさいをはこんでるからまりさよりずっとゆっくりこっちにむかってきてるんだぜ。」 「ゆ!?ほんとに?」 それがほんとうならば食糧問題は一気に解決する。幹部達はまりさに詰め寄る。 「むきゅ??なんでひとりだけでもどってきたの?おやさいがたくさんあるばしょがわかったのなら ゆっくりもどってくればよかったじゃない?」 ぱちゅりーの疑問はもっともである。たしかに群れとしては食料事情はひっ迫しているが、 まりさ個人(?)に関して言えば目の前にわざわざお宝の山があるのにひとりだけお野菜も食べずに 戻ってくるのは普段の素行からして考えられないと幹部の皆は思っていた。 「ゆったぜ?このままじゃまずいってだぜ。」 「ゆん!?」 長まりさは気づいた、このまりさは群れのためにおいしいおやさいを食べずに群れまで急いで このことを伝えに来てくれたのだ。 ぱちゅりーや他の幹部達もこのことに気づいて尊敬の眼差しでまりさをみつめた。 「ゆぅ・・・まりさ。」 「だぜ。まぁこんなさびれたむれでもうまれこきょうなんだぜ。」 とまりさは照れたようにそっぽを向きながらつぶやいた。 「ゆぅ・・・。」 長まりさは胸に暖かいものが宿るのを感じた。 そして、そのまりさの献身を無駄にしないためにも早く行動しなくてはならない。 「ゆん!それじゃおやさいがたくさんあるゆっくりぷれいすまでえんせいをするよ!!」 そう、猛々しく長まりさは宣言した。 続く いやね、わざわざ遠征するのにゲスまりさが仲間に野菜を持ち運びさせたのは 野菜がたくさんあるという証拠を見せたかった。 しかし長はゲスまりさのいうことを信じたってことにしておいていただけますか。 後この群れは人間という存在は知っているけど会ったこと無いということでお願いします。 このSSに感想を付ける
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多分既出ネタです、すみません それに加えて色々と俺設定が入ってます。 俺はゆっくりの虐待が好きだ 三度の飯よりも虐待が好きだ しかし、本当に虐待ばかりでは、生計を立てられない そこで、俺は考え付いた 趣味と実益を兼ねるのだ 「ゆっくり菓子職人」 今日も俺のゆっくり菓子製作が始まる。 ゆっくりはそもそもお菓子じゃないか、と思いの貴方、それは間違いである。 ゆっくりが恐怖・絶望を与えると甘くなるのは周知の事実でしょう。 これを利用することによって、至高のお菓子を作り上げることが俺の使命。 さあ思う存分虐待を…いや、菓子作りを始めることとしましょうか。 まず用意するゆっくり。これは野生のなるべく元気なゆっくりを選びましょう。 頭がお幸せで、世界は自分を中心に回っていると思っているような奴を。 早速、1匹のゆっくりれいむを捕まえてきました。 おお、頭にゆっくりが生っています!これは貴重な料理素材です。 赤ゆっくりは味に変化を持たせることができるので、とても重宝します。 しかし、親子でないと味が反発しあうことがあるんですねー。 今回捕まえたゆっくりはちょうど出産直前ですので、最適なわけです。料理のし甲斐がありますね! とりあえず、生まれてきた赤ゆっくりには、発情させたゆっくりありすの出す透明な粘液を塗って放置しておきます。 こうすることで、表皮が柔らかくしておくのです。 さて、親のゆっくりれいむですが、今の状態では髪の毛やリボンが邪魔です。 そこで、まずリボンを取り外しておきます。このリボンは後で使うので取っておきます。 髪は雑味の原因となるので、火で炙って、全て燃やしてしまいます。 こうして見事にハゲゆっくりが出来上がります。 あ、そうでした。今後の調理がしやすいように、あんよもしっかりと焼いておきます。 こうしておけば調理中にゆっくりがテーブルから落ちて潰れる心配がありませんね。 こうしてゆっくりを安定させたら、ゆっくりありすを取り出します。 もちろん発情した状態のありすです。 これを置いておくと、勝手に行為を始めてくれるので、しばらく待ちます。 おっとすっきりしてしまいそうでした。危ない危ない。 すっきりしてしまうと台無しです。ありすはもう使わないので捨てておきましょう。あ、食べますか? 適度にホクホクになったハゲゆっくり。 つぎはいよいよ赤ゆっくりを使います。 赤ゆっくりは丹念に潰していきます。これには力の調節が必要です。ゆっくりと、握るように潰していきます。 一気に力を入れると形が崩れてしまうので、力を徐々に入れていき、餡子をひねり出すのです。 握りつぶした餡子をハゲゆっくりに塗ります。丁寧に、目と口の周りにも、擦りこむように塗っていきます。 餡子は少し残しておいてください。これも後で使います。 完全に塗り終わったら、上から小麦粉を練って作った生地を被せて、形を整えます。これで元通り。 さらに、れいむの髪型を、赤ゆっくりの餡子を使って再現します。そして、取っておいたリボンをつけます。 これでとりあえず出来上がりました。 しかし、まだお出しするわけにはいかないんです。 最後の仕上げ、今回調理したれいむのお相手のまりさです。 こちらはあんよを焼いてあるだけなので、割と正常です。 これらを一緒に二つセットで皿に乗せて完成! 最後に一つ。 お召し上がりになる際は、れいむのリボンを解き、髪の毛(の形をした餡子)からお食べください。 これには理由があります。 ゆっくりは、主に装飾品や外見で仲間を認識します。 よって、禿げゆっくりになったれいむは、もうまりさに相手にされません。 これによって、食べられる最期までお互いを支え合っていた2匹の関係は一瞬にして無くなります。 自分の子供を失い、パートナーも失った、絶望の渦中のゆっくりはさぞかし美味しく頂けるようになっていると思われます。 では、ごゆっくりお楽しみください。
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最近幻想郷にゆっくりとかいう生物があらわれた。 その体は餡子でできてる故幻想郷の食糧事情に貢献したわけだが1つだけ被害を受けたところがあった。 それは菓子屋だ。 ゆっくり増えるよ!by昔話 そして俺は幻想郷で菓子屋を営んでるうちの1つ 名前はわざわざ言うまでもないだろう さて、どうして恩恵を1番受けそうなところが被害を受けているのかというと・・・ カランっ 「あ、いらっしゃいませ~」 「この店もまだお饅頭高いわねぇ 隣町の○○さんのところなんか~」 「はぁ・・・気をつけます」 「次くる時までに安くしておきなさいよね!」 っとこのとうり値段でしか物事を考えないババアに何かと言われるからだ。 利益目的で饅頭の中身をゆっくりにした菓子屋に 小豆から作っているうちの菓子屋が値段で勝てるわけないだろ 常識的に・・・ かと言ってもゆっくりを使っているところは値段をうちの半額ほどにしている (と言っても以前はうちのところくらいが適正価格だったのだが) そういう訳で物は試し 長い物には巻かれろという言葉もあるとうりうちの店も普通の饅頭の半分の価格の ゆっくり饅頭を作ってみることにした。 まず材料として当然ながらゆっくりが必要だ ゆっくりを捕まえるためのエサはうちの店の廃棄品でいいだろう ゆっくり自体はそこら辺の野原に行けばいる っとみつけた 日光がよく当たる位置でぼーっとしている 数は1匹しか見当たらないが自分で作ってみる分には1匹だけで十分だ 「ゆ?おにいさんはゆっくりできるひと?」 「あぁ、その証拠にあまあまを持ってきたんだ 食うか?」 「ゆっ! ゆっくりたべるよ!」 ほれっ そうやって俺は饅頭を作った時のあまりの餡子を放り投げる 「むーしゃむーしゃ しあわせー♪」 そりゃあうまいに決まってるだろ・・・ お前たちみたいにどこから湧いてきたかわからんような餡子じゃなくて 本物の小豆から作ってるんだからな そう思いゆっくりを計画どおり連れて帰ることにした あまあまをやったかどうか知らないが、簡単についてきたのでうるさく騒がれずにすんだ。 とりあえず・・・次は洗えばいいか 饅頭はもっとあまあまをよこせとかどうのこうの言っているけど無視をして 洗面所で軽く洗う 「ゆ? おふろなんだね! ゆっくりするよ!」 「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪ ゆっくり~♪」 そういえば底部も洗わんとな そう思いれいむをひっくり返す 「ゆ~ゆ~ゆぎぇ!」 突然ひっくり返したせいか舌をかんだようだ 「どぼじでぞんなごとするのぉおおおぉおおお!!」 よし、次は餡子を取り出すだけだ 何かと喚いてるれいむを無視し台所まで抱えて行く 「ゆ?なんかあまあまの匂いがするよ! おにーさんかわいいれいむにもってきてね!!」 その前に味の確認をしてみないとな・・・ れいむを横に寝かせ髪など邪魔な物がない底部を切断してみる 「ゆぎゃぁぁぁあああああぁあ でいぶのあ゛んよがぁぁあ゛ああ゛ぁあ」 ん、意外とうまいじゃないか この味ならなかなか売れるんじゃないか? あの後ゆっくりから作った饅頭を売ってみたが意外とよく売れた 評判もなかなかよかったので新製品として取り入れようと思うのだが 問題はゆっくりの入手方法だ 加工所で購入するのはゆっくり饅頭の魅力である安さをなくしてしまう 自分で捕まえるのも毎日休みの時間をつぶしてまでやりたくはない 2匹捕まえて子供を産ませるのもエサ代や育つ時間で効率的とはいえない さて・・・どうしたものか そういえば昨日ゆっくりの餡をスプーンでえぐりとっていた時 たしか3分の2ほどまでとってもわずかに生きていたな・・・ もっとも「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」としか言わない壊れた玩具のようになっていたが そしてゆっくりの傷はオレンジジュースで回復する となれば・・・・ 一ヶ月後 裏庭には小屋が完成されてあった 河童の技術は本当に恐ろしいものがある。盟友でよかった。 それで小屋といっても普段想像するような粗末な小屋ではない 外からの見た目はまさにそのような物であるが中は違う まず扉を開けてすぐにボタンがあり、その足元すぐには階段1段分の段差がある そして床はタイル敷きになっていて水をいっさい逃さないようにしている 排水溝も開け閉めは可能だ そして1番の変化は壁にところどころ穴があることだ この穴が何かは後でわかるだろう ともかく今必要なのはゆっくりである 小屋の完成に合わせてゆっくりを1匹加工所から注文をしておいた 注文といっても何か特別なしつけをしたやつではないのだが どうせなら上質の餡子を持つやつがいい 自分で捕まえにいってもよかったのだが注文をした理由はそういうわけだ。 小屋の中に入り、目を覚まさせるために箱からだし声をかける 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ! ゆっくりしていってね!」 本能に従い目を覚ましたようだ 「ゆゆっ? おにーさんはゆっくりできるひと?」 「あぁ、その証拠におかしがあるのだが食べるか?」 「ゆ! ゆっくりしないでれいむのおかしをおいていってね!!」 適当に持ってきた失敗作をそこら辺に放り投げる 失敗作といっても砂糖が入っているし、食うだろ れいむが生ゴmいや、失敗作をむさぼっている隙を見計らって壁に移動する そう、穴ぼこだらけの壁だ この穴の中かられいむの身長にあわせ真ん中くらいのところの穴に指をいれる 先端がフック状になっており、引っ張ると人間でもよく見ないとわからないような糸がでてきた ピアノ線だ。 これを反対側の壁までひっぱりフックにひっかけると準備は完了だ。 「おにーさんこれじゃあ足りないよ! もっともってきてね!! のろまはきらいだよ!」 と、準備が終わったと同時にれいむは生ゴミを食いつくしたようだ。 そこで隠し持っていたチョコを3分の1ほど割って放り投げてやる 「むーしゃむーしゃ しあわせー♪ おにーさんこのあまあまがもっとほしいよ!」 そこで残りのチョコを見せてみる 「ゆっ! ゆっくりしないでれいむにわたしてね!!」 無視する。 「ゆっくりしないでね! れいむおこるよ!!」 と言って空気を頬に入れプクーっと膨れあがる。 そこでまた無視する。 「もうかんべんできないよ!! ゆっくりもらうよ!」 と、言ってジャンプをして奪いとろうとする それを待っていた。 「ゆっ! ゆっ!」と言いながら奪おうとするれいむをかわし ピアノ線をのりこえてれいむとチョコの中間にピアノ線がくるようにする。 「よし、これを食べれたられいむお前の勝ちだ」 そう言いチョコの位置も今までの人間の手の高さと違いれいむの正面に移動させておく。 「ゆゆっ! こんな高さにするなんてやっぱりにんげんさんはばかなんだね! ゆっくりたべられていってね!」 と言い最後の力をふりしぼり奪い取ろうとする。 がチョコに触れる前にれいむの体に触れたのはピアノ線であった。 「ゆぎゃぁぁあ゛あ゛ぁぁああ でいぶのおめめがぁあ゛あ゛ああ」 どうやら真ん中より少し高くちょうど眼球に位置するところに線はあったらしい それにしても何故まっぷたつにならないんだ・・・?と思いよく見てみるとわかった。 餡子の粘着性のおかげで両断されたのがくっついているだけであったのだ。 ようするに上にのっかっているだけなのだ。 少々遅れて理解し、まっぷたつになったのを手でつかみしっかりと2つに分けて床に置いておく。 そして小屋の外にあるボタンを押す これは維持費に少々金がかかるのだがゆっくりの再生に不可欠なオレンジジュースを 段差の半分ほど満たしておける装置なのだ。 こうして次の日様子を見に小屋にいった。 「「ゆっくりしていってね!!」」 うん、やはり2匹に増えている というか何で一晩ジュースにつかしておいただけで失われた臓器まで再生してるんだよ・・・ 物理的におかしいだろ・・・常識的に とりあえず1匹は捕まえておく すると当然ながらもう1匹の方も反応した 「ゆっ! れいむをはなしてあげてね!! ゆっくりしてないよ!!」 そりゃあ口を押さえているんだからゆっくりおしゃべり(笑)もできないだろ するとれいむの堪忍袋に触れたのかどうか知らないがポインポイン音をたて 足もとにむかって攻撃をしてきた。 「ゆっ! ゆっ! ゆっくりしねぇぇえええ!!」 …こんな饅頭の攻撃に痛みは感じないのだがオレンジジュースがズボンについて正直うっとうしい わざわざ相手にするのも煩わしいのでピアノ線でまた両断させてやることにした れいむの攻撃のタイミングを読み取りうまくピアノ線のところに誘導する 自分が切らないようにうまく足をむこうにどけて…と 「ゆぎぇぇええぇえ!! でいぶのめがぁあ゛ああぁあ どぼじでごうなるのぉぉおおお」 絶叫と共に 双眸は再び裂けた。 そんなわけで本格的に製品化をすることにしたのだが、正直これが売れて売れてたまらない きっとこれは他店に比べると高級店の位置に分類されるうちの店が他の店と同じような値段の新製品を出したことによる ブランド効果もさることながら、事実饅頭の皮と餡子の3分の1は普段使っているようなものと差し障りのない物を使用しているからだろう このことによって他の店と比べ利益率は劣るながらも味の低下は他店よりおさえられることになった これだけやれば例の値段ババアにも喜んでもらえるだろ・・・ 季節が変わりはじめ人々が長い休みを取ることができるような時期になってからそれは起こった。 トゥルルル トゥルルル 「はい? え、もうそんな時期ですか? わかりました… すぐ準備をします」 うちの店では代々店を継いだものは初めのうち数年間は1年間のある時期に1週間だけ 先代の者に教えを請いにいかなければならないという慣習がある これは後を継いだ者が独立したことをかさにして代々の技術を低下させないようにするためのものである そして毎年のことながらこの時期がきたのだ。 そんなわけで例年通りの閉店の準備をする。 一時閉店の張り紙よし バイト君の休暇宣告よし あと食材は・・・適当な菓子にでもしてバイト君へのお土産に持たせればよし 現金は・・・銀行にでも預けておいて あとは店の電気を消すだけで準備は完了。 そして週が変わり・・・ 「ふぅ…」 この日はやっと1週間に亘る技術の確認が終わり店へ戻ることができた日だ といってもまるまる1日休めるわけではなく次の日から再開ができるように準備をしなければならない 張り紙は・・・この日から再開することをかいてあるから問題なし バイト君たちには通達しているはずだが確認のために連絡をしなければならない 食材は・・・全部使い果たしたから改めて今日買わなければならない 現金は預けてあったのを材料費と小銭のためにおろさなければいけない 店の電気は・・・ん? 何で離れ小屋の電気が・・・? 「・・・ぁ・・・い・・・」 小屋に近づいてみると何やら声がする そういえばこの小屋はゆっくりを増殖させるための小屋であったのを忘れていた もしかして店の味の秘密を探るための侵入者であるかもしれない 物音をたてずに扉の前に立ち勢いよく開いてみる この光景はまさに圧巻であった 半身のないゆっくりが幾重にも重なり合い部屋を埋め尽くしている だがそれだけならばまだよかった 部屋の底がゆっくりの再生を促すオレンジジュースの絨毯になっており 再生したと同時に餡子がうごめきあいその衝撃で部屋中にひいたピアノ線で身を裂かれているのだ 「ゆぎぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 「いだぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「でいぶのおべべがぁあああああああああああああああ!!!!」 「ごべんなざぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「あやばりまずがらぼうやべでぇええええええええ!!!!!!」 「い、いとさんでいぶのどごろにごなぃでねぇえええ!!」 「ゆ゛っゆ゛っ… ぼっど…ゆっぐりじだがった…」 ゆっくりは餡子が結合していれば痛みは共有する このゆっくり達の叫びは無駄だとわかっていても誰かに変わってもらいたいという嘆き そしてこのゆっくりと目があった瞬間触手のようなものが伸びてきて・・・ 目を覚ますと私は店の仮眠室で横になっていた バイトの話によると私は離れ小屋の前で倒れていたようだ 小屋について聞いてみたがバイトが来た時点では扉は閉まっていたようだ あれから一年 あの日私は離れ小屋のボタンを消して以来扉には近づいていない。
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レミリアは夢を見ていた。 周りのものが大きく見え、自らに手足がない。その夢ではレミリアはゆっくりゃであった。 なぜ夢なのかわかったかというと、自らの意思で話したり動いたりすることができないため。 レミリアはゆっくりゃの視界から景色を見ていた。 夢の内容は、レミリアがフランの一撃を受けた後から始まる。あの後、レミリアは力なく倒れた。 それに対してフランとゆっくり達が駆け寄る。皆泣き喚いて、冷静さを失っていた。そんな中、遅れて近づいてくる影があった。 幽香だ。 幽香が一歩、また一歩と近づいてくる。 周りを見渡すと、向日葵畑が荒らされていた。先ほどのフランの一撃のせいであろう。完全に怒らせてしまったのかもしれない。 フランは完全に血の気が引いて、かちかちと奥歯を鳴らしていた。向こうはまだやる気なのか。 ゆっくりゃの隣でゆフランが怯えている。フランは皆を守ろうと身構えた。けれども、もう戦う体力と気力が残っていないのは明白だった。 それでも姉とゆっくり達を置いて逃げることはしなかった。だが、今襲われたらあっという間に皆殺しであろう。 こっちは満身創痍。幽香はほぼ無傷。最悪の状況だ。 しかし幽香はそのまま通り過ぎてしまった。そして背中を向けたままフラン達に話しかける。 「別にそんなに怯えなくても大丈夫よ。喧嘩を売ったこっちに非があるんだから、畑の事は気にしなくてもいいわ。 それに、弱いものいじめなんてとっくの昔に飽きたもの。」 フランは内心納得しなかった。あんなに好戦的な幽香がなぜこのような心変わりを。 「どういう風の吹き回し?あんたがあっさり引き下がるとはおもえないんだけど。」 「別にあせることはないかなって思ってね。またいつか別の日に続きをしましょう。」 レミリアたちが知る由もないが、幽香がフラン達を見逃す理由、それは幽香はフランの本当の全力を目の当たりにして、 今仕留めるには惜しいと判断したためだった。 フランはまだまだ強くなる。今はまだ精神面で幼いため、すぐに感情的になる。 その場合能力は本来の力を発揮するが、それでは強大な力を完全にコントロールできない。 「そう、あなたがその力を完全に使いこなせるようになったときに決着を。幻想郷の外の誰も邪魔が入らないところで、 どちらかが動かなくなるまで。」 フランはまだまだ小さな芽である。けれども、いつかフランの心が能力にも負けないくらい強くなり 自らの意思で操れるようになったとき、そのときの美しい花を刈り取るときのような心地よさを楽しみにしている。 ゆくっりゃ達は上目遣いに幽香の事を見て、レミリアとフランに止めを刺さないことに感謝をするかのように声をかけた。 「ゆっくりしててね!」「ゆっくり!」 その言葉に反応してか、幽香は背中越しに微笑んだ。それは誰にも見られることはなかったが、これまでで最も美しく凄惨な微笑であった。 「ええ、ゆっくり待つことにするわ。何年、何十年、何百年、何千年でも。」 そうして幽香は去っていった。お姉さんとお友達を大事にするのよと言い残して。 フランはその能力ゆえに物を壊したことはいくらでもあるが、直したことは殆どない。 ましてや吸血鬼でなければ即死するであろう重傷を負った者に対して、どうすればいいのかわからない様子であった。 「ゆっくり~!!!」 ゆフランがいきなり飛び出して、遠くへと飛んでいく。ゆっくりの名に反して、その速度はこれまで見た中で最も速かった。 フランがさらに動揺する。そんなフランにゆっくりゃが声をかけた。 「ゆっくりまってて!!だいじょうぶ!おねぇちゃんだいじょうぶ!!」 ゆっくりゃがフランを落ち着かせようと芸をした。レミリアを怒らせたあの『いないいない、うー』だ。芸の幅が本当に狭い。 けれども、自らがゆっくりゃとなっていたので表情こそわからなかったが、その声は必死だった。その必死さが伝わったのか、 フランは少し落ち着いた。フランはレミリアの体をぎゅっと抱きしめて待っていた。 少しして、ゆフランが小悪魔を連れてきた。このために飛んでいったのであろう。小悪魔は大急ぎで咲夜を屋敷に運んで、 休むまもなく飛んできたのでふらふらであった。小悪魔はレミリアの体のひどい有様とそれを抱きしめるフランたちの姿を見て、 何が起こったのか把握できない様子であった。それでも小悪魔は気をしっかり持つように深呼吸をすると、震えを帯びた声で言った。 「急いで屋敷に戻りましょう!パチュリー様の治療を一刻も早く受けさせないと!」 以外にも気丈なところがある娘だった。小悪魔は傷ついたレミリアの体を抱えると、紅魔館に向かって飛んでいった。 その後レミリアの体はパチュリーの治癒呪文を受け続けることになった。パチュリーはレミリアの惨状を見てうめき声をもらしたが、 すぐに治療を開始した。この魔女はいつも引きこもっているくせにこういったときには本当に行動力がある。 治療は日が昇っても続いた。美鈴とメイド達がパチュリーの指示によって右へ左へと動き回り、 薬品を持ってきたり儀式の用意をしていた。 ゆっくり達でさえもゆっくりすることなく急いで動き回っていた 「パチュリー、本当にありがとう・・・・」 フランは何度も何度もパチュリーにお礼を言っていた。 「たすけてくれてありがとう!」「ゆ!」 ゆっくりゃとゆフランが続く。 結局、峠を越したのは日が落ちてからであった。パチュリーは体力がないのにずっと働き通しだったので、 ただでさえ青白い顔が余計に白くなっていた。この子がこれぼど必死だったのはめったに見たことがなかった。 そんなパチュリーが言うには、吸血鬼の回復力とパチュリーの魔力を合わせても、 あと少し小悪魔が私の体を連れてくるのが遅れたら間に合わなかったそうだ。そう考えると、 あのときゆフランが小悪魔を連れてくるのが遅れていたら、確実に死んでいたであろう。 それからはフランとゆっくりゃ達はレミリアのそばから離れようとはしなかった。 そんな一人と一匹に対してかわりがわり美鈴、パチュリー、小悪魔、そして怪我から復帰した咲夜が看病を手伝っていた。 レミリアは彼女らをこんな主人にはもったいないと思い、申し訳なさとありがたさに涙が出そうだった。 けれどもそのはゆっくりゃのものだったので涙を流すことはなかった。 1日、2日と時間が経っていく。このとき、レミリアはある異常に気がついた。この体の持ち主の動きが段々ゆっくりしている。 飛ぶことが殆どなくなり、レミリアが寝ているベッドではいずるようになった。 今までずっと屋敷の中を飛び回っていたのに、そのようなことがなくなった。 そしてそれは日が増すごとに顕著になっていった。5日経ったとき、二匹は殆ど動くことはなくなった。 ただじっとレミリアの体の隣でゆっくりしている。 ふと、ゆっくりゃがフランに対してこんな質問をした、いつの間にこんなに語彙が増えたのだろう。 「ふらん、ふらんはおねぇちゃんのことすき?」 フランは満面の笑みを浮かべ、かつて穴が開いていた私の胸をさすりながら一言で答えた。 「えぇ、大好きよ」 レミリアは胸が熱くなった。 「よかった~♪」「う!」 ゆっくりゃとゆフランもうれしそうに反応した。 レミリアはこの子達にあんなにひどいことをしたのに、なんでこんなに喜んでもらえるのだろう。 ふと、この子達が自分とフランの分身であったことを思い出す。 そうだ。この子達も姉妹なんだ。姉と妹が喧嘩しているのを見ていてうれしいはずがない。 結局、レミリアがフランに対して距離を置いていることがゆっくりゃ達にはわかりきっていたということか。 そして目の前のレミリアのまぶたが上がっていくのが見えた。フランが慌てて咲夜に声をかける。 「お姉様が目を覚ますわ。みんなをよんできて!」 そこでレミリアは再び意識を失った。 レミリアが目を覚ましたとき、見慣れた天井が目に映った。 ここは自分の部屋のベッドだった。 体のほうに目を向けるとフランの顔が見えた。今にも泣きそうな笑顔という、矛盾した表情をしていた。 「お姉様。起きたのね!」 「ゆっくり~!」「うぅ~!」 視界を端に向けると、ゆっくりゃとゆフランのほほがあたっていた。なんだかやわらかくて湿っぽい。 部屋を見回すと、皆が集まっていた。ほっとした顔、泣きそうな顔、笑っていた顔、それぞれ違う表情を浮かべていた。 このまま目を覚ますことがないことも考えられたのだろう。 まず、レミリアはやるべきことがわかっていた。レミリアはゆっくりゃとゆフランを抱きしめて、 部屋中に存在する者すべてに向けて言った。 「みんな、本当に迷惑をかけてごめんなさい。あなた達にも八つあたりなんかして、本当にごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」 しかし口からは陳腐な謝罪しか出ない。こんなに迷惑をかけたのだ。いくら謝ってもすまないであろう。 いつの間にかレミリアの目には涙が浮かんできた。 フランを地下に閉じ込めたこと、ゆっくりゃ達に八つ当たりしたこと、フランに手をあげたこと全てが頭の中でぐるぐる回っている。 「お姉様、悪いのは私だよ。だからそんなに謝らないで・・・」 フランはレミリアを抱きしめてそういった。その腕は細く、震えていた。 姉を貫いたときの感触がまだ残っているのかもしれない。 「お嬢様、私も・・・」「あのときは手を上げてすいません・・・」 美鈴も咲夜も駆け寄ってくる。いくら皆のことを思ってとはいえ、主に意見を出したり、手をあげたのだ。 「かってにでていってごめんなさい!」「ゆぅぅぅぅ・・・」 ゆっくりゃたちまで謝ってくる。 けれども悪いのは自分だったとレミリアが返しを入れるので、事態に収集がつかなくなった。 「あ~、まったくいつまでもうじうじと・・・。」 パチュリーが外から業を煮やしていた。。 「ゆぅ!」「う~!」 そのときゆっくりゃとゆフランいいことを思いついたという顔をして、 ベッドから空中へと飛ぶと、皆をレミリアのベッドの回りに集めて、互いのほほをくっつけるように押し付けた。 それはゆっくりゃとゆフランがかつてフランに仲直りを促されたときに行った行為だった。 「こら、なにすんの」「えへへ、くすぐったい」「何か恥ずかしいですね」「うぅ」「ちょっ何で私まで・・・・むきゅ」 「パチュリー様のほっぺた柔らかいです・・・」 「なかなおり♪なかなおり♪」「ゆっゆ~♪」 混乱するみんなの姿をよそに、二匹はとても楽しそうであった。 なんでだろう。勝手にフランを避けて、ゆっくり達に嫉妬して、皆に迷惑をかけたことが馬鹿らしくなった。 数百年のわだかまりを気にするのはもうやめるべきなのかもしれない。 思い出すのはフランを地下に閉じ込めていた時の遠い距離と冷たい罪悪感、 今感じるのは隣で笑っているフランのほほの柔らかさと温かさ。 過去は決して消えない。だからこそ、今のこの瞬間も忘れない限り、いつまでもゆっくり残る。 ゆっくり達は生きることを楽しんでいる。作られた命でありながら レミリアは自らに似ても似つかない、けれども最も欲しいものを教えてもらった分身達に向かって感謝した。 「ゆっくりゃ、ゆフラン、ありがとう。」 「「ゆっくり~♪」」 しかしこれが結局生きたゆっくり達が飛ぶのを見る最後のときとなった。 そして次の日 日がまだ昇っている時間のことであった。 「いないいない、うわぁぁぁぁぁ♪」「うわぁぁぁぁ♪」 「あはは、かわいくなーい」 レミリアとフラン、ゆっくりゃとゆフランは皆で一緒に同じベッドに寝そべっていた。 周りには紅魔館の住人が全て集まっている。レミリアが今までずっと寝ていてつまらなかったのでパーティをしようと言い出した。 吸血鬼のパーティは普通夜に行うが、この日は朝からずっと通しだった。 レミリアはゆっくり達とこうして遊ぶのは初めてだった。 「あんた達には迫力がないわ。こうするのよ。いないいない、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「こあい、こあい!」「ゆう゛ぇ゛ぇ゛ぇ」 ゆフランが泣き出してしまった。実は怖がりなのかもしれない。 そんなゆフランをフランが慰めた。抱きつかれたまま離れようとはしない。 そんな二人と二匹を咲夜をはじめとした住人達は見守っていた。彼女らの目には目の前のじゃれあう子供達が、 種族が違えどもまるで姉妹のように見えていた。 悪魔の住処紅魔館。この日ばかりはその名も似合わなかった。 そして愛するものと共にゆっくり過ごす時間の安らかさに、レミリアは今までの人生になかった心地よさを感じることになった。 時間が経つにつれて、ゆっくり達は段々動かなくなってきた。言葉に反応するのも遅れている。 日が暮れたころ、目を瞑ったまま動かなくなった。 「ゆっくりゃ、ゆフランどうしたの?」 フランがゆっくり達に声をかける。 しかしまったく反応がない。いつもは呼ばれなくても来るのに。 いつしかパーティ会場はしんと静かになった。皆これがどういうことか気がついたのだろう。 そしてこのパーティの本当の意味を。 口を開いたのはパチュリーだった。 パチュリーはこの生物のベースとなる技術を持っていたため、何か思うことがあったのか 「元々この子達は餡子によって食用に作られた生き物。すぐに食べられる運命のために、その寿命は儚い物だったのでしょうね。 いつかはこうなるとわかっていても、やっぱり愛着がわくと辛いわね。」 そういうと力なくうなだれた。隣では小悪魔がパチュリーにしがみついて泣いていた。 美鈴は大声を上げて人目をはばからず泣いていた。彼女は門番であり、ずっと一人で行う仕事であった。 そんな折に遊びに来てくれた友達が愛おしくて仕方がなかったのであろう。 咲夜は泣いてはいなかった。けれどもまぶたが何時間も泣いた後のように真っ赤に腫れていた。 先ほどまでこのようなことはなかったはずなのに。 周囲を見ると、下っ端のメイド達まで嗚咽を漏らしていた。あの二匹は本当に人懐っこかったのであろう。 ゆっくり達は餡子とひき肉でできた人形。正確には生き物にすら分類されない。 パチュリーが作った人形のように泥でできたのならともかく、餡子ではいつか腐って崩れてしまう。 いくら食べ物を与えても、変えようのない結末だった。そして人形であるがゆえに生まれ変わることができない。 だからこそ、最後にこうして共にゆっくりするのが望みとなった。 フランは二匹を抱き寄せた。もう二度と会えないということが信じられないようであった。 目に光が灯っていない。この子にはその悲しみに耐えられなかったのだろうか。 そのとき、 「こいつらがただの人形だったらあたいも仕事がなくなって楽なんだけどねぇ。」 ドアの近くを見ると何者かが立っていた。見上げるほどの長身、手に持つは大きな鎌。三途の川の案内人。死神の小野塚小町であった。 「どういうこと、それに仕事ってなによ」 「そのままの意味さ。死神の仕事は死者の案内。こいつらはもう人形じゃなくて妖怪なんだよ。ちょいと違うが、 わかりやすくいうと九十九神みたいなものかな。ずいぶん可愛がったみたいじゃないか。ほら、あたいの後ろにいるこいつらもそうさ」 そういうと、小町の後ろから様々なゆっくり達の霊が出てきた。ゆっくりれいむ、ゆっくりまりさ、ゆっくりありす、 その他たくさんの種類のゆっくりがいた。幻想郷の誰かがフランと同じようにかわいがっていたのだろう。物好きがいたものだ。 小町は二匹の遺体を抱えた。連れて行くつもりなのだろう。 「やだぁぁぁっ、連れて行かないでぇっっ。もっと一緒にいるのっ。私と遊ぶのっ。ご飯を食べるのっっっ。」 フランが泣きながら必死で止めようとしたがレミリアはそれを抑えた。 「行かせてあげなさい。フラン。あの子達の顔を見なさい。とても安らかな顔をしているじゃない あなたと、紅魔館のみんなのおかげよ。だから、わかって・・・」 フランは何度か嗚咽を漏らし、手のひらをぎゅっと握り締めて耐えていた。 「吸血鬼の涙なんて珍しいものを見たな。ここからはちょっとしたサービスでもするか。四季様には内緒だよ」 小町が二匹をぽんと叩くと、するりと二匹の体から何かが出てきた。あれはゆっくりゃ達の霊だった。 「さぁ、お別れを済ませてきな」 ゆっくりゃは相変わらずうーうーと鳴きながら館の住人全てに笑顔を向けるとレミリアとフランに向かって飛んでいった。 その元となった吸血鬼とは似ても似つかないが愛嬌のある顔は決して忘れないだろう。 ゆフランは姉の後を追うようにして浮かんでいった。皆に見送られていると見ると、とてもくすぐったそうな顔をしていた。 今まで愛情を注いでくれた皆に感謝をしているようであった。彼女は元となった吸血鬼に似て、姉をとても好いていたのだろう。 二匹は紅魔館の住人達ひとりひとりに挨拶をしていく。ゆっくりと時間をかけて 最後にレミリアとフランの前に飛んできた。 「ゆ!」「う゛!」 それはどこかふてぶてしくも憎めない顔であった。 フランは涙を拭い去り、二匹に向かって目を向け、最後の挨拶をした。 「うん。わかった・・・。今までありがとうね。ゆっくりゃ、ゆフラン。あなた達のこと大好きだったよ。」 ゆっくりゃ達は微笑んだ。その顔がこれまで過ごした時間がどのようなものなのか語っていた。 レミリアは何を言うべきか悩んだ。いくら言葉を尽くしても伝えられないほどの恩がこの子達にはある。そうだ、 だったら一言に百の意味をこめよう。ゆっくり達にとって最もなじみのあるあの言葉で 「ありがとう。向こうでも、ゆっくりしていってね・・・」 二匹はだいじょうぶだよとでもいうように返事をした。 「じゃあこいつらは連れて行くよ。これほどいろんな人に愛されているなら三途の川は渡れるだろうから安心していいさ。」 「うー♪」「う~♪」 そうして二匹は死神に連れられ、死後の世界に旅立つことになった。 ゆっくり、ゆっくりと・・・ その場にいる皆がそれぞれの思い出を胸にゆっくり達の百鬼夜行を見送った。 約1ヶ月という、人外には刹那のような時であったが、誰もの心にゆっくり残るだろうと思われた。 レミリアは思った。あっという間の命だった。けれども決して忘れはしない。 今からでも遅くはない。あの子たちがそうだったように。 フランと共に、これからゆっくり幸せに生きていく。 そう誓った。 その後ゆっくり達がいなくなり、しばらくしてからの紅魔館では、ほとんど以前と同じ姿になっていた。 門番は一人で門を守っていた。一緒に遊んで夜を過ごす友はもういない。 魔女は図書館に引きこもっていた。影でこっそりかわいがる居候はもういない。 小悪魔はそんな魔女の世話をしていた。魔女のいつもと違う一面を見せてくれた客はもういない。 メイド長はメイド達を従えて館を切り盛りしていた。プリンを作ってあげた主の分身はもういない。 しかしひとつささやかな変化があった。それは吸血鬼姉妹であった。姉は甲斐甲斐しく妹の世話をしていた。 ふたりがじゃれあう姿を見て、紅魔館の住人達はあの騒がしくも無邪気であった二匹の饅頭を思い出す。 主とは決して似つかないが、どこか面影のあるあの饅頭を。 妹はこれから様々なことに向かっていくことになる。 力の制御 向日葵妖怪との決着、 外の世界に適応すること 姉はそんな妹にいろいろなことを教えていく。 これまで置いていた距離を縮めるように。 いつか妹が一人前になって生きていけるように そのためにこうやって一緒にいる あせることはない。時間はたっぷりある。ゆっくり頑張っていこう。 蛇足 小町がゆっくりゃ達を連れて三途の川に着いたとき、ゆっくりの霊が大量に居座っていた。 裁判所の中に駆け込むと 「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!」」」」」」」 「よいぞっ!」 上司であるザナドゥが壊れていた。ここのところ彼女は事務仕事のあまりの忙しさにゆっくりできていなかった。 そこで現れたマイペースの塊、ゆっくり。 そのため、ザナドゥはゆっくりにあこがれるあまり、ゆっくりになりきってしまったらしい。 小町は思わず遠くを見てしまった。 「ゆっくりした結果がこれか。転職先でも探すかな・・・」 いい話でした -- 名無しさん (2008-09-01 12 41 56) 泣いちゃいました… -- 名無しさん (2008-09-10 13 30 32) ゆっくりは姉妹の懸け橋となった・・・このゆっくりには勲章を挙げたい気分だ・・・。 -- 通りすがりのゆっくり好き (2008-09-14 21 52 30) 全俺が泣いた・・・ -- 名無しさん (2008-09-15 17 27 06) イイハナシダナー。もうゆっくりを虐めることなんてできねぇ・・・ -- 名無しさん (2008-09-15 19 52 55) (´;ω;`)ブワワッ!! -- 名無しさん (2008-12-09 01 01 32) 涙が…とまらない…と思ったらえーき様www -- 名無しさん (2008-12-23 07 38 15) 最後のシーンで泣きながら笑った。 -- 名無しさん (2008-12-27 10 34 16) 最後がwwwww俺涙目wwwww -- 名無しさん (2009-02-17 19 20 01) ゆっくりゃとゆフラン大好きだから余計涙腺が… -- 名無しさん (2009-02-18 01 49 55) あれおかしいな、目から汗が・・・ イイハナシダナー -- 名無しさん (2009-03-10 00 23 23) (´;ω;) -- 名無しさん (2009-08-17 04 07 18) お嬢様をひっぱたいた時の咲夜さん辛かったろうな~ -- 闇 (2010-02-18 13 47 36) 泣け・・・ないぜっ・・・泣ける -- 名無しさん (2010-02-18 21 31 41) いい話すぎる(´Д⊂グスン -- 名無しさん (2010-06-11 23 07 18) 切なくも温かいゆっくり出来る話でした。ありがとう。 -- 名無しさん (2010-11-28 11 58 52) イイハナシダッタノニナー -- ザナドゥェ (2010-12-04 02 41 26) やばいマジで泣いてしまった・・・ -- ゆっくり愛護団体団員 (2011-03-20 03 46 11) 俺…ゆっくりいぢめをやめるよ… -- 名無しさん (2011-04-15 16 44 16) 泣けるうううううううううううううううううぅ -- ちぇん飼いたい (2012-03-01 17 01 29) 名前 コメント